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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第17章 【信玄編・後編】※R18※


「はは…すまない。女人に向かって失礼だったかな。でも誓って言うが、謙信本人は女も嫉妬するほどの美人だぜ?そして誰よりも強く誇り高い武将だ。誉め言葉として受け取ってくれると嬉しいな」

「…」

それを聞いた竜昌は、頬のあたりがこそばゆくなるのを感じた。自分では見えないが。血の集まった頬が桃色に染まっていることだろうことは、容易に想像できた。

「安土で最初に会った時、君は俺に刀を向けただろう?あのときの太刀捌き、凛とした姿。女謙信の名に相応しいと思ったね。そして────」

信玄はふと言葉を切って、竜昌をじっと見つめた。

「多分その時から、俺は君に恋をしていた。そして今でも」

「…ッ!」

竜昌の身体がびくりと震えた。
眉根を寄せ、信玄を睨みつけているその顔には、怒りとも喜びとも悲しみともつかない、複雑な表情が浮かんでいた。

信玄は、まるでお手上げ、というように、手のひらを竜昌に向けて両手をあげた。

「ああ、この期に及んで君を絆(ほだ)そうってわけじゃない。斬られる覚悟はできている。どちらにせよ、長くはないこの身だ。どうしても死ぬ前に伝えておきたかっただけなんだ」

「…」

わなわなと震える唇を必死に噛みしめる竜昌。その目には、薄く涙が溜まり始めていた。

「正直に言うと、君を仲間に引き入れたいという下心もあった。同じ信長に恨みを持つ者として、君と一緒に戦えたら、どんなに心強いか…」

「…」

「でも君の、主君への思いを聞いて、それも夢物語だと悟ったよ。それでもね、君と会いたくて、君と話すのが嬉しくて、ついつい安土に長居しすぎてしまった。そしてついには、明智殿に悟られてしまった」

「まさか…」

竜昌は、安土を去ろうとした信玄を引き留め、夜祭に誘ったことを思い出し、顔から血の気が引いた。

その表情を読んだ信玄は、優しくなだめるように言った。

「ほらまたそういう顔をする。君のせいじゃないったら」

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