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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第17章 【信玄編・後編】※R18※


『謀略か…ま、どちらにしろ奴とはいずれ刀を交えにゃならん運命だ。釣られてやろうじゃないか』

信玄の手勢に同行するのは、高城国(たかしろのくに)の兵たち。信玄はこれも気に食わなかった。

高城の国は、謙信の治める越州と、信長の治める美濃・尾張の間にある国で、謙信とは以前から同盟を結んでいた。
高城国は以前、配下の小国であった秋津国(竜昌の生国)を足掛かりに尾張に攻め込もうとしたが、しかし劣勢と見るや最前線の秋津城と竜昌の軍勢を見捨てた経歴を持つ。(第一章参照)
その舌の根も乾かぬうちに、今度はじりじりと国境を侵略してくる隣国に手を焼き、謙信に助けを求めてくる始末。

それに信長がからんでいるという情報がなければ、間違いなく『高城国など捨て置け』と謙信に進言していたであろう。

信玄以上にやる気のなさそうな様子で行軍する高城の兵たちを見て、信玄はやれやれと溜息をついた。



その時、一人の兵が前方から息を切らして駆け付けてきた。先に放っていた斥候に違いない。

「御館様、申し上げます!ここより三里、辰巳の方に敵影。街道をこちらへ向かっております!数およそ二百騎」
「ご苦労。して旗印は」
「織田の木瓜紋、そして花菱!」

手綱を持っていた信玄の手に、僅かに力が入ったことに気付いたのは、幸村だけだった。
斥候の報告を聞いた兵たちに動揺が走る。木瓜紋の旗印ということは、織田軍の中でも信長直属の精鋭兵である証拠だ。

『妙だな…織田が表立って出陣しているとは聞いてない。それに本隊にしては数が少ないし…』

信玄は、幸村を振りかえった。
幸村は無言で信玄の目をみつめ返し、頷いた。

『是非もなし…これも運命か』

信玄は、腰の大太刀をすらりと抜くと、日の光にかざすように頭上に掲げ、檄を飛ばした。

「皆の者、これより織田の兵を迎え撃つ!そこなる丘のふもとまで進軍、鶴翼の陣を敷け!」

「はっ!」
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