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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第3章 【政宗編】※R18


「織田軍だ!おとなしく縛につけ!さもなくば斬る!!」
賊の先頭にいる者たちが一斉に槍を構えた。
竜昌はそれにひるむことなく、馬に乗ったままヒラリと槍先を飛び越え、賊の本隊のど真ん中に舞い降りた。
そしてその場にいた賊の一人を、一刀のもとに斬り伏せる。
竜昌単騎での襲来に、賊の本隊は大混乱となった。元々ろくな訓練など受けていない、食いっぱぐれた足軽たちの寄せ集めだ。背中を見せた者から、次々と竜昌の刀に倒れていった。

『畜生!』
必死に追いついた政宗の眼に、敵陣の中で狂ったように刀を振るう竜昌の姿が見えた。秋津城の戦いでみた、あの竜昌だ。
「引けー!降伏するものは武器を置け!命だけは助けてやる!」
政宗が叫ぶと、鬼神のような竜昌を見て恐怖にかられた賊たちは、次々と手から槍や刀を落とした。
あとに残されたのは、賊の屍の中に単騎で立ち尽くす、返り血で真っ赤に染まった竜昌の姿だった。その眼は飢えた狼のように爛々と輝き、政宗の背筋をゾクリとさせた。
「ハァッ、ハァッ…」
再び静けさを取り戻した林の中に、竜昌の荒い息の音だけが吸い込まれていった。

─── ◇ ─── ◇ ───

生き残った賊は捕らえられ、竜昌が切り殺した者たちは、街道からすこし離れた寺の近くに手厚く埋葬された。
埋葬が終わると、そこで日が暮れかけたため、竜昌たちの部隊は野営することになった。
竜昌は、本陣に焚かれたたき火の傍らで、甲冑をつけたまま床几に腰かけてじっと炎を見つめていた。
呼吸こそ収まったが、その眼には先ほどの獰猛な光がまだ宿っているようだった。
兵たちはそんな竜昌を恐れ、声をかけずに遠巻きに見守っていた。
そこへ、兜を脱いだ政宗がやってきた。
「おい、竜昌」
竜昌が顔を上げると、今までになく険しい表情の政宗がそこに立っていた。
「ちょっと来い」
竜昌が立ち上がると、政宗はその手を強く引いて、本陣を離れて林の中にグイグイと引っ張っていった。
林の中からサラサラと水の音が聞こえる。どうやら近くに沢があるようだ。
まだ薄く日が残っているので、よく目をこらすと、林の中を流れるせせらぎが、小さな淵を作っているのが見えた。
政宗はその淵のわきにある大岩に上り、竜昌もそこに引き上げた。
「あっ」
次の瞬間、政宗は有無を言わさず、竜昌をその淵に突き落とした。
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