第14章 【信長編】※閲覧注意※ R18
そして、そのまま上座へは就かず、何故か竜昌の背後に回った。
「…血の匂いがするな」
竜昌の耳元で信長が囁いた。かすかな吐息が耳朶をくすぐり、竜昌の背筋がぞくりと震える。
竜昌は振り返りもせずに、目を伏せたまま、震える声で答えた。
「もう…洗っても洗っても…とれないのです」
次の瞬間、ぴちゃ、という小さな水音とともに、竜昌の首筋に熱く軟らかいものが触れた。
「…ッ!」
竜昌の下腹部が、ずくりと熱く疼いた。信長の舌が、竜昌の肌の上をゆっくりと滑っていく。
「俺と同じ匂いだ…」
そう囁きながら、信長は 竜昌の首や耳を舌でなぞった。その舌の動きに呼応するように、竜昌の身体に甘い痺れが広がり、体温が急激に熱くなる。
「はい…私は信長様のモノですから」
竜昌の答えに満足したように笑うと、信長は後ろから手を廻し、指で竜昌の唇に触れた。
ちゅぷっ… れろ、くちゅ…
竜昌はその指先に舌をからめて吸うように愛撫をした。
口内に侵入してきた指を、竜昌が舌先でちろちろと弄びながら軽く甘噛みすると、信長は仕返しとばかりに竜昌の首筋にかぷりと噛みついた。
「ンンッ!」
竜昌の腰がびくりと跳ねた。
しかし信長はいいところで指を引き抜き、竜昌から身体を離した。唇から糸をひいた唾液を、竜昌が舌で舐めとった。
「来い」
立ち上がった信長は、先に立って閨につづく襖を開けた。
竜昌もゆらりと立ち上がり、そのあとに続いて閨へと足を踏み入れた。
─── ◇ ─── ◇ ───
その頃、仁科松之丞は、月明りだけを頼りに、ボロボロの身体を引きずるように森の中を歩いていた。
極度の疲労と空腹に意識を失いそうになると、決まってあの女の顔と声が浮かび、松之丞を奮い立たせた。
『逃げろ。逃げて生き延びてみせよ!』
敵陣に捕らえられた松之丞は、敵将に引きずられるように本陣の裏山へと連れてこられた。
そこで殺されるものと覚悟は決めたが、意外にも敵将は、手に持ったその刀で、松之丞の首ではなく、その身体を縛っていた縄を切った。
「…!!」