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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第14章 【信長編】※閲覧注意※ R18


────殿、藤生殿、

「…藤生殿」


「はっ!」
竜昌は肩を叩かれ、我に返った。
辺りには、天にも届かんばかりの男たちの咆哮────「勝鬨」が満ちていた。
「わが軍の勝利ですぞ!」
七日七晩の休みなき激戦の末、織田軍はついに西国一の大大名、仁科吉政の攻め滅ぼしたのだった。これによって織田信長は天下統一に王手をかけたことになる。
勝鬨を聞いて気が緩んだのか、連戦の疲れに、竜昌は立ったまま白昼夢を見ていたようだった。夢の中で、竜昌はあの遊女のむせかえるような白粉の匂いを嗅いだような気がした。
目の前に累々と横たわる屍。敵か味方かもわからない。
からからに乾いた唇を少し舐めると、干からびた血の味がした。
竜昌が疲れた体を引きずるようにして本陣に戻ると、そこにはすでに落とされた敵将の首が集められていた。皆、恨めしそうな目で竜昌を睨んでいるかのように見えた。
「藤生様ー!」
その時、数人の兵が、ガチャガチャと鎧を揺らしながら本陣に入ってきた。
「恐れ入ります!」
縄で縛られた少年の身体が、ドンと竜昌の前の地面に放り出された。
背丈に似合わぬ甲冑を着てはいるが、まだ年の頃は十二・三といったところだろう。
美しい少年の白い頬は泥と血にまみれ、ほつれた髪がそこに影を落としていた。
「仁科の子息、松之丞をとらえました!」
松之丞と呼ばれた少年は、竜昌や織田兵には目もくれず、側に並べられていた首にくぎ付けになった。
「うぐっ…父上…兄上…ッ」
その首に見覚えがあるのか、松之丞は歯を食いしばり、縛られた身体でのたうちながら、ぽろぽろと涙をこぼした。
「いかがいたしましょう」
「…決まっておる。根絶やしにせよとの信長様の命令だ」
竜昌は顔色ひとつ変えずに、一旦収めた刀を抜き。そして反対の手で、泣いている松之丞の襟首を掴んで立ち上がらせた。
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