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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第14章 【信長編】※閲覧注意※ R18


折からの風に煽られ、火は瞬く間に山寺全体に燃え広がった。
火を消そうと飛び出してきた僧兵は織田軍の弓兵の餌食となり、逃げ出そうとする者は門前で待ち構えていた槍兵に串刺しにされ、逃げ遅れた者は火だるまになって庭を転げまわり、やがて息絶えた。
そこはまさに地獄絵図だった。
バラバラと火の粉が降り注ぐ中、火に包まれた伽藍が まるで巨大なかがり火のように夜空を照らすのを、竜昌は遠い眼で見つめていた。
織田軍の若者は、膝が震えるのを止めることができなかった。
『ありえん…こんなの竜昌様じゃねぇ…』
若者は、年の頃もほど近い竜昌に、以前からほのかな憧れを抱いていた。
元城主という肩書に恥じない凛とした美しさ、そのくせ時折みせる少女のような微笑、そして何よりも卓越したその武芸。
竜昌の隊に配属された時は、嬉しくて眠れなかったほどだった。
しかし今はそれが、恐怖の対象となりつつあった。
『前に竜昌様はおっしゃってた…敵の急所を突き、ひといきに殺めるのは、苦しまないようにするためだって…そのために武芸を磨いたって…あのお方は決して人殺しを楽しむような人じゃなかった!』
呆然と見つめる若者の前で、竜昌は高笑いした。
「アッハハ、もっと燃えろ、焼き尽くせ!」
その黒緑色の瞳に映る紅蓮の炎は、明け方まで消えることはなかった。


─── ◇ ─── ◇ ───


竜昌は、安土城の階段を 足取りも軽くかけ昇っていた。一刻も早く信長に戦果を報告したかったのだ。
"あの時"以来、信長からついに竜昌に夜伽の声がかかることはなかった。
たとえ軍議の場でも、竜昌の首を絞めたり、力ずくで犯したことなどまるでなかったかのように、飄々としている信長。
一方の竜昌も、真意を確かめるのが恐ろしく、信長を正視できずにいた。
『何か…お気に召さないことでも…』
そうこうしているうちに、竜昌の胸の中には、焦りにも似た不安が降り積もっていった。
しかし今宵は、戦勝報告という口実をもって、信長と会うことができる。
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