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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第14章 【信長編】※閲覧注意※ R18


「貴様の生っちょろいお情けのおかげで生き延びた小僧がどうすると思う?復讐の怒りに燃え、いずれ俺らの前に再び立ちはだかるのだ。そのせいでまた多くの血が流れるだろう、なあ? 竜昌よ」
竜昌の頭は、ガンガンと破れ鐘のように疼き始め、徐々に信長の声が遠くに聞こえるようになっていった。
(俺の命は絶対だ。俺が殺せと言ったら殺せ!)
だんだんと暗くなっていく竜昌の視界の中で、燃え盛る炎のような二つの瞳だけが、いつまでも輝いて見えた。その奥にある深淵の闇が、竜昌を捉えたまま離さない。
(…忘れるな、貴様の命は俺のものだということを…)
竜昌はその闇に魅入られたまま、意識を手放そうとしていた。それはまるで、竜昌を苦しみから解放し、虚無の世界へと誘う優しい誘惑にも思えた。
『信長…様…』
竜昌が死を覚悟したその瞬間、突然 信長は手を離し、竜昌の身体は床に叩きつけられた。
「…ヒュッ…ッゲッ、ゲホッ、ゲホッ、ハッ、ハッ、」
呼吸が戻り、床に伏したまま咳き込む竜昌。
「光秀!」
「ハッ」
「後始末は任せる」
「御意」
「…のぶ…」
竜昌はなんとか顔を上げて信長に縋ろうとしたが、身体が言うことを聞かず、再びその場に崩れ落ちた。
その姿を一瞥すると、信長は足音も荒く謁見の間をから立ち去った。
だんだんと遠ざかっていく足音に混じって、竜昌の目から涙がぽたりぽたりと床へと落ちる音がした。

─── ◇ ─── ◇ ───

その夜、自室で謹慎していた竜昌は、信長に呼び出され、天主に向かった。
『切腹か…』
竜昌は、安土へ連れてこられ、最初に信長に謁見するときも、このように死を覚悟していたな、と思い出していた。
あれから一年余りの月日、信長に仕えてきた。日頃 接する信長は、理知的で穏やかな武将という印象だった。
しかし今日、竜昌はようやく思い出していた。敵方にいた頃、彼の者は『魔王』と呼ばれ、恐れられていたのだ。
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