第14章 【信長編】※閲覧注意※ R18
時を遡ること二日前────
「藤生様!天守へ続く扉を突破しました!」
「よし、行け!!」
「はっ!」
号令と共に、突き破られた重厚な木扉を抜け、手に手に刀を携えた鎧武者たちが、我先にと階段を駆け上がっていった。
顕如に加担し、最後まで信長に抵抗しつづけた古木城。その攻城戦の総大将に、竜昌は任命されていた。
浄土真宗を信奉する 信心深い古木城の兵たちは、織田軍相手に善戦したが、竜昌率いる五千の兵の前には、所詮多勢に無勢。あっという間に堀を埋められ、門を破壊され、織田兵は今や本丸にまでなだれ込んでいた。
「無益な殺生は許さん!雑魚には目をくれるな!城主の梶木基平を捕らえよ!」
「ははっ!」
竜昌の号令が響き渡る。
しかし天守に突撃した竜昌の兵たちは、肩透かしをくらった。敵兵の姿が見えないのだ。
「チッ、逃げたか」
竜昌も自ら抜刀し、天守に一歩足を踏み入れた。
その時、上の方から兵の悲痛な叫び声が届いた。
「梶木殿はじめ一族郎党、自刃!!」
それを聞いた竜昌は、顔を歪めた。奥歯がギリリと軋む。
「どけ!どけっ!」
配下の兵たちをかき分けながら、竜昌は天守の最上階まで 跳ねるように登っていった。
「クッ…」
天守の最上階にある狭い板の間。そこは今や血の海と化し、首の無い遺体がいくつも転がっていた。その中には、城主の室(妻)たちであろうか、打掛を着た女の遺体もあった。
「ぐ…ぐぶ…」
一つだけ首のつながった身体。おそらく主の介錯を命じられた家臣だろう。切腹を試みたようだが、死にそびれ、苦し気に血の泡を吐いていた。
「…」
竜昌は無言で、その男の首に刀を振り下ろした。
グシュッ
返り血の飛沫が、竜昌の頬を汚す。
いつものことながら、人の脊髄を切り落とすときの、何とも言えない手ごたえ。
竜昌はシュッと鋭く刀を振り、刀身にこびりついた血を振り落とした。