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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第13章 【秀吉編】 おまけ


「あっ襦袢がっ」
「恥ずかしいんだろ?」
秀吉は湯の中で、向かい合わせになるように竜昌を膝の上に乗せた。竜昌は真っ赤になって下を向いたが、水面下に逞しい秀吉の裸体が見え、慌てて目を逸らした。
「せっかく信長様がお暇を下さったんだ。この湯も堪能しないと」
竜昌と秀吉は、信長になかば強制的に休暇を取らされ、この湯治場に送り込まれていた。傷によく効くと噂の湯をもつ、山奥の一軒宿だが、どうやら信長の手配により貸切られているらしく、客は二人だけだった。そこで二人は、滝壺を望む眺めの良い露天風呂に、昼のうちにと入りにきたのである。
「秀吉様、傷の方は!?」
恥ずかしさをごまかすように、竜昌が上ずった声で聞く。
「すまん、あれは嘘だ」
「む!?」
怒ったように頰をふくらませた竜昌の耳に、秀吉はそっと唇を寄せて囁いた。
「…昨日、あれだけシても大丈夫だっただろ?もう心配ない」
「〜〜〜〜!!!」
それを聞いた竜昌は、まるで茹で蛸のように、顔のみならず全身を真っ赤に染めた。
そんな竜昌を、秀吉はニヤニヤと笑いながら眺め、愛しげに頬を指で撫でた。
「竜昌…」
「はい…」
「そういえば、『りん』ていうのはお前の幼名か?」
急な話題に、竜昌は驚いたように目を見開いた。
「はい、藤生の家では、おなごに花の名をつけるのが慣わしでした。私の幼名は竜胆と…」
「なるほどそれで『りん』なのか。いい名前だ、響きもいい」
照れ臭そうに笑う竜昌の唇を、秀吉の指が撫でた。
「確か、前に安土に来ていたお前の姉君もそう呼んでいたな」
『覚えていて下さったんだ…うれしい…』
「それで舞もか…」
舞の名が秀吉の口から出たとき、竜昌の胸の片隅が、針で突いたようにチクリと痛んだ。
竜昌は、晴れて秀吉と恋仲になったとは言え、舞の存在を完全に消し去ることがまだ出来ていない自分に、少しだけがっかりした。
「なあ、これから俺も『りん』って呼んでいいか?」
「え、え?」
秀吉の視線が甘く揺らめく。動揺した竜昌はまともに見返すこともできず、視線を泳がせた。
「は、恥ずかしいので…二人だけのときなら…」
「…わかった」

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