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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第12章 【秀吉・後編】※R18


秀吉は、昨夜の竜昌との会話を思い出していた。

『だって考えてもみろ、もし俺が光秀の頭を撫でてたら、可笑しいだろ!?』

秀吉の握り拳がワナワナと震える。
「テメェ…盗み聞きしてたのか?」
しかし光秀は、それをまったく意に介さぬように、鼻で笑った。
「深夜に 寝ている女の部屋に忍び込むような輩に言われたくはないな」
もちろんそれは、昨夜 竜昌の部屋を訪れた秀吉のことを言っているのであろう。
「クッ…ソ…」
悔しそう歯噛みする秀吉を尻目に、光秀は柔らかな銀髪を翻して、スタスタと歩き出した。
「竜昌なら今 湯浴みに行ってる。お前まだ信長様に挨拶してないだろ?そろそろ軍議が始まるぞ、早くしろ」
「え、あ、はあ?…おい、ちょっと待てよ!なんでお前が!」
「さあてね?」
捕まえようとする秀吉をヒラリとかわし、光秀は笑いながら天主へと歩いていった。
秀吉は、光秀を追いかけるのを諦め、盛大にため息をついた。そしてもう一つ、竜昌との昨夜の会話を思い出していた。

『でも、これは秀吉様の奥方になる人が持つものだと…光秀様が…』

光秀は、秀吉の邪魔をしているようでいて、結果的には、致命的に『鈍感』な竜昌に、いくばくかの示唆を与えていた。
さらに秀吉の仕事の肩代わりまでこなしている。どうせ『お前の手助けなどは死んでもしないが、疲れ果てている竜昌を見るに見かねて』などと言い訳を言うのだろう。
光秀は、なかなか真意の読み取れない、ひねくれた男だが、少なくともこれでいくつかの借りができた、と秀吉は認めざるを得なかった。
「チェッ…」
秀吉は短く舌打ちしながらも、その顔にはわずかに笑みが浮かんでいた。

─── ◇ ─── ◇ ───

安土城天主の謁見の間に、久しぶりに秀吉が姿を現した。
「遅いぞ、猿」
信長が余裕たっぷりの表情で笑った。
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