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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第12章 【秀吉・後編】※R18


今にも口から飛び出てしまいそうなほど激しく脈打つ心臓に、竜昌の声は震えた。
「お前が無理して俺の仕事を手伝ってくれているって聞いて、こっそり屋敷を抜けて様子を見に来たんだ」
「無理だなどと…それに秀吉様は私のせいで…」
「それは違う。すべて俺がふがいないせいだ。お前のこと守るって言ったくせに、カッコ悪いとこ見せちゃったな」
照れ臭そうに笑う秀吉。
「いいえ、秀吉様はちゃんと守って下さいました。あの時、私が…」
今思えば、黒装束の男に最期の一太刀を浴びせられそうになったとき、竜昌は懐剣を抜いて立ち向かうこともできた。しかし瞬時に『秀吉の懐剣を血で汚してはいけない』と心の中で声がして、竜昌は一瞬ためらったのだ。そして次の瞬間には、秀吉の背を凶刃が切り裂いていた。
「…秀吉様、ごめんなさい…ごめんなさい…」
竜昌の目にみるみる涙が溢れた。
それを見た秀吉が慌てたように言った。
「竜昌、俺はな『ご』で始まる言葉より『あ』で始まる言葉が好きなんだ」
「あ…?」
「竜昌、仕事を手伝ってくれて『ありがとう』」
秀吉はあくまで優しく、竜昌に微笑みかけた。
その言葉を理解した竜昌は、震える声で囁くように言った。
「秀吉様、守って下さって『ありがとう』ございます…」
それを聞いた秀吉は、満足げに微笑むと、片手を離してその長い指で竜昌の涙を拭った。
「お前に怪我がなくて本当に良かった…」
「秀吉様…」
「頼むからもう泣くな、な?そうだ、仕事を手伝ってくれた礼に何かやろう。欲しいものはないか?」
「欲しいもの…」
急に問われた竜昌は、パチパチと瞬きをしながら、頭に欲しいものを思い浮かべようと試みた。それを考えているうちに、いつのまにか涙は止まっていた。
「では秀吉様…」
「ん?なんだ?何でもいいぞ」
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