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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第12章 【秀吉・後編】※R18


秀吉が竜昌の居室の前までたどり着くと、障子の向こうでかろうじて行灯の火が細々と灯っているのが見えた。
「…竜昌…?」
小さく呼びかけても返事はない。
静かに障子を開けると、文机に竜昌が突っ伏して眠っている姿が目に入った。肩からはかいまき(綿入りの布団)を羽織り、筆は手から滑り落ちて、文机に広げた紙に墨を落としていた。
「竜昌…」
もう一度呼びかけたが、竜昌は深い眠りに入っているようだった。
秀吉は、かいまきごとそっと竜昌の身体を抱き上げると、隣の間に敷いてあった寝床へと運んだ。
以前に、馬の背に竜昌を乗せるときに抱き上げたときより、心なしか軽くなっているような気さえした。
寝床にそっと竜昌の身体を下ろしたとき、竜昌の目がわずかに開いた。
「ん…?」
竜昌は焦点のあわない目で、しばらくじっと秀吉の顔を見つめていたが、再びゆっくりと目を閉じると、ぱたりと寝床に倒れこんだ。
「お、おい」
秀吉が覆いかぶさるように竜昌の顔を覗きこむと、寝床で丸くなった竜昌は、何やらぶつぶつと呟いている。
「あ〜、ついに…疲れすぎて秀吉様の幻覚まで見るようになってしまった…」
それを聞いた秀吉はクスリと笑った。どうやら幻だと思われているらしい。
「…秀吉様に…会いたいよ…」
竜昌の長い睫毛に、小さい涙の雫が宿った。
それを見た秀吉は、胸がギュッと締め付けられるのを感じた。
「…俺も会いたかった」
秀吉は静かに竜昌の頬に口づけた。
その刹那、竜昌の目が突然ぱっちりと開いた。そして恐る恐る視線を横に動かして、すぐ真上にある秀吉の顔を見た。
「ひっ…!」
反射的に、秀吉を押しのけようと手で胸を押す。秀吉の顔が傷の痛みでわずかに歪んだ。
「ッ…!竜昌、俺だ」
「あ、え、秀吉様!?…ご、ごめんな、さ…」
秀吉はゆっくりと竜昌の手をとり、優しく寝床に縫い止めた。
「お前の手、冷たい…」
秀吉は、冷え切った竜昌の指に、自分の熱い指をからませた。やがて二人の体温がじわりと溶け合っていく。
「こんなになるまで…」
吐息がかかるほど間近で、切なげに揺れる秀吉の眼差し。しかし竜昌の寝起きの頭は、何が起きているのかいまだに理解できていなかった。
「秀吉様、あの、えっと…?」
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