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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第12章 【秀吉・後編】※R18


「なに、謝ることはない…ふむ…これは秀吉の家紋か。本来なら奴の妻に持たせるべきものだろうな」
「そんな…」
申し訳なさそうに肩をすくめる竜昌を見ながら、光秀は出立前の秀吉との会話を思い出していた。


─── ◇ ─── ◇ ───


「なあ小舅殿、いい加減素直になったらどうだ」
「だからそれやめろって」
「小舅でもない、兄でもない、では何なのだ」
「…」
秀吉は目を逸らして、自分の膝を強くつかんだ。
「父親か」
「言うと思った」
うんざり、というように秀吉は両手で顔を覆って、天井を見上げた。
「…そういう【役職】がないと、あいつのことを心配してはいかんのか?」
「そうは言ってないが…お前には【想い人】
という役職もあるだろうに」
「なっ」
秀吉は顔を真っ赤にしながら光秀を睨みつけた。
「否定するのか」
「そんなんじゃねえよ…」
光秀はその薄い唇の端に笑みを浮かべながら、腕を組んだ。
「竜昌は、お前が舞に思いを寄せていたことを知っている」
「…」
「想いの届かぬ者の身代わりにされたと知れば、悲しむだろうな」
「違う。やめろ」
「そう思われるのが嫌で、言い出せないでいるのだろう」
「ほんっっとうにお前、嫌な奴だな」
睨みをきかせる秀吉をものともせず、光秀はククッと笑った。
「これはしたり。俺は誰よりもお前のことを理解しているからこそ、お前の心の内を代弁してやっているのだぞ」
「ほざけ光秀」
「俺の言うことは間違っているか?」
「~~~~」
秀吉は悔しそうに畳をドンと叩いた。
その時、部屋の障子の向こうから、小さな声が聞こえた。
『失礼いたします。支度が整いました』
声の主は、舞に扮した竜昌だった。
秀吉は大きく息を吐いて呼吸を整えると、竜昌に向かって答えた。
「おお来たか、入れ」


─── ◇ ─── ◇ ───

「竜昌…」
「はい」
光秀は懐剣を竜昌に手渡しながら、その琥珀色の眼にぐっと力を込めた。
「もう少し秀吉を信用してやれ」
「え…?」
これ以上ないほど信用しているつもりだった竜昌が、小首を傾げた。

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