第2章 【女城主編】※共通ルート おまけ
強気だった政宗の声が、一瞬にして怯んだ。
「傷薬、用意しときますね。政宗さん」
家康が小馬鹿にしたように政宗を見て笑った。
「応援してるぞ、政宗」
少し離れた席で一人盃を傾けていた光秀までもが、口の端だけ上げてニヤニヤ笑っていた。
「豊臣様、どうかりんのことをお頼み申し上げます」
菊はそう言いながら、秀吉の盃に酒を注いだ。秀吉はあまり酒に強くないのか、垂れ目の縁がほんのり色づいている。
「こちらこそ、藤生殿のような勇ましい武将が加わってくださるのは実に頼もしいことです」
「りんは女らしいことは何一つできませんけれども、武芸だけはそれなりですので…」
「姉様、一言多い。あと私は竜昌です」
「ハハハ、仲が良いんだな」
二人の様子をみて、秀吉は優し気に目を細めた。口は悪いがお互いに信頼しあっているのがよく伝わってくる。
「兄弟はお二人だけなのですか?」
「はい、母は私を生んで間もなく…姉様には母替わりに育てていただきました」
「こんな跳ねっ返りに育てた覚えはないんですけどねえ?」
「…」
そもそも竜昌が武芸を習い始めたのは、薙刀で妹のりんを小突き回す菊に立ち向かうためだった…ということは黙っておいたほうがよさそうだ、と竜昌は踏んだ。
三成はしかめっ面の竜昌を和ませるように、ニコニコしながら訪ねた。
「そういえば藤生様は、武芸を御父君に習われたのですか?」
「いえ、父も元々病がちでして、剣術はもっぱら大叔父に教わりました」
「では大叔父様も相当な使い手でいらっしゃたのですね?」
「うーむ使い手と申しますか…おかしな方でして。とてもお強いのですが、仕官もせずにふらふらと諸国漫遊に出ておられて、たまに秋津に立ち寄ったときに稽古をつけてもらっておりました」
「あら、懐かしいわね柳生の大叔父様。まだご息災でいらっしゃるかしら」
「柳生…?」
「はい。大叔父は柳生宗矩と申します」
「ええええええええええええええええええええ」
秀吉と三成が思わず仰け反った。再び全員の注目が集まる。まさか天下に名立たる剣豪の名をここで聞くことになるとは。
その後、安土では竜昌に弟子入りを申し込む者が後を絶たなかったという。
「舞といいます。今後ともよろしくお願いいたします」
「藤生竜昌と申します。以後お見知りおきくださいませ、奥方様」
「えっ!ち、ちがっ!」
「!?」