第12章 【秀吉・後編】※R18
『秀吉様は、私の護衛ではなく【舞様の護衛】として行くんだ…』
自分を戒めるように、竜昌は唇を噛んだ。
「では秀吉様…お手数をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします」
「ん…うん」
三つ指をついて深々と礼をする竜昌に対し、歯切れの悪い秀吉の返事。もし相手が本当の舞なら…違った反応をするのだろうか。
頭を上げてもなお、竜昌は秀吉の顔を見ることができなかった。
─── ◇ ─── ◇ ───
数日後、竜昌は【舞】として安土を発つことになった。
筋書きとしては、狙われている舞を匿うため、信長が舞をお忍びで岐阜城に移すというものだった。
竜昌が舞として出かけている間、舞本人は秀吉の館の奥座敷で身を隠している手はずだ。
作戦に協力する、ごく数人の手練れの者以外には、このことは知らされていなかった。
「では舞様、お着物 ありがたく拝借いたします」
「りんちゃん、気を付けてね」
「はい。必ずや悪党どもを捕らえて参ります」
「信じてるよ!」
竜昌は、奥座敷で舞と共に最後の身支度を整え、秀吉の部屋へ向かった。
奥座敷を一歩出たときから、竜昌は舞のふりをしなければいけない。秀吉の居室の前につくと、竜昌は小さな声で囁いた。
「失礼いたします。支度が整いました」
『おお来たか、入れ』
障子の向こうから秀吉の返事が聞こえる。
周りの人目を確認し、障子の隙間から身体を滑り込ませるようにして秀吉の部屋に入る。