第12章 【秀吉・後編】※R18
「信長様、恐れながら、私に考えがございます」
広間に凛とした声が響き渡った。全員の視線が一点に集中する。
「ほう」
信長はいつものごとく、まるで新しい玩具をみつけた少年のように、その緋色の目を輝かせた。
「竜昌、申してみよ」
「はっ!」
─── ◇ ─── ◇ ───
「だーめだ だめだ だめだ だめだっ!!!」
ひときわ けたたましい叫び声が広間に響く。
いきりたつ秀吉をなだめようと、武将たちが秀吉の周りを取り囲んでいる。
信長は、上座から武将たちのそんな姿を、ニヤニヤしながら見つめていた。
「竜昌をおとりになんて、そんな危険なことさせられるか!」
政宗が、秀吉の肩に手を置いて言う。
「そう言うがな、秀吉。お前は秋津戦での竜昌を見てないだろう」
「だからなんだ!」
「俺は実際にあいつと刃を交わしたが、あいつはめっぽう強い。今でもあの時のことを思い出すと、身震いがするくらいだ」
「だからといってだな…」
「そうだぞ秀吉。むしろ俺は、竜昌が敵をすべて斬り殺したりしないか、不安なくらいだ」
光秀も不敵な笑いを浮かべながら、秀吉の正面に対峙していた。
「…全員の息の根を止められては、拷問のしがいもないからな」
「勝手に言ってろ!」
秀吉のすぐ側にいた三成が、菫色の瞳を潤ませながら、秀吉の顔を見上げる。