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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第11章 【秀吉・前編】


いつになく仏頂面の信長。その手には、秀吉がいつも金平糖を隠し入れている小さな茶壷が握られている。
「秀吉」
「はっ」
「俺の金平糖が、家出した」
「はあああぁ!?」
唖然とする秀吉の前で、信長は茶壷の蓋を開け、中から小さな紙きれを取り出した。
そこには細い文字で、『探さないでください 金平糖』と書いてあった。
「ぶふっ」
思わず秀吉は噴き出した。間違いなくそれは竜昌の字だった。
「貴様が今日あたり隠すのは、七番目の床の間かと思うておったら、そこにはなく、八番目の武具庫のほうにあった。そして開けてみたらこのザマだ」
『マジか…隠し場所全部バレてる…』
秀吉は、信長の金平糖の食べ過ぎを防ぐために、安土城内で全部で九つの隠し場所を作り、金平糖の入った茶壷を毎日移動させていたのだが、どうやらそれらも全部お見通しのようだった。
しかし確かに信長の言う通り、昨日は床の間に隠したはずだった。それを武具庫に移し、ふざけた書置きを残したのは、間違いなく竜昌だろう。
政務のみならず、信長の金平糖の管理までこなすとは。
『ただ者じゃないな…』
「これは貴様の仕業か?」
「というか信長様、今日の分の金平糖は、前借りだといって昨夜お召し上がりになりましたよね…?」
それを聞くと、信長は駄々っ子のように口をとがらせて、ぷいと横を向いた。
「…明日までにちゃんと連れ戻しておけよ、秀吉」
「ははっ」
秀吉は頭を下げたが、その唇には抑えきれない笑みが浮かんでいた。


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