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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第11章 【秀吉・前編】


「それはこっちの台詞だ光秀。お前こそここで何をしている?」
「俺が安土城の廊下を歩いていて何かおかしいか?」
フフンとからかうように鼻で笑う光秀。相変わらずその顔には、何を考えているかわからない不敵な笑みが浮かんでいる。
「竜昌なら今朝早く、河内の国境でおきた小競り合いを収めに、出かけていったぞ」
「なんだって…?」
「今までだったらこれはお前の仕事だな。しかし信長様が直々に竜昌に命じられたのだ」
複雑そうな表情をする秀吉を見て、光秀はククッと笑った。
「眉根に皺が寄ってるぞ」
「うるさい。だいたい何でお前がそのことを知っているんだ」
「さあてね?…おっと、このことは秘密にしておけと竜昌に言われていたんだった。これは失態」
光秀はわざとらしく片手で口許をふさぐと、その琥珀色の眼だけで笑った。
「はあ?何故だ」
「小舅に余計な心配をかけると、あとあと五月蝿いからだろうな」
「誰が小舅だって!?」
「おや?心当たりでも?」
光秀はすれ違いざまに秀吉の方をぽんと叩くと、笑いながら去っていった。
『クソッ…』
小競り合いの鎮圧とは言え、危険が伴う任務には違いない。それなのに黙って出かけた────いや、自分は竜昌の主ではないからそれも当然なのだが。
何よりも、それに気づけなかった自分と、さらに自分の知らない竜昌の情報を、光秀が把握していることが余計に腹立たしかった。
秀吉は苛々とした表情を隠しもしないまま踵を返すと、足音も荒く天主のほうへと歩いて行った。


─── ◇ ─── ◇ ───


次に秀吉が天主で出会ったのは、信長その人だった。
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