• テキストサイズ

【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第11章 【秀吉・前編】


「よくがんばったな。だけど夜はちゃんと寝ろよ?」
秀吉はそう言うと、大きな掌で舞の頭をくりくりと撫でた。
はにかんだ舞の頬がうっすらと紅色に染まる。
「はーい、秀吉お兄様」
舞が冗談めかしてそう応えたとき、秀吉の瞳の光がクッと屈折するのを、竜昌は偶然見てしまった。
『…秀吉様…』
その一瞬で、竜昌は悟った。秀吉は、主君である信長の寵姫、舞を─────
「隙あり」
ぽこっと軽い音がして、政宗の木刀が、中庭に立ち尽くしていた竜昌の頭を小突いた。
「!?」
我に返ると、政宗が片目を細めてニヤニヤと笑いながら立っていた。
「どうした?ぼーっとして」
政宗が、竜昌の視線の先をたどると、そこには舞の頭をやさしく撫でる秀吉と、猫のように目を細め、気持ちよさそうに撫でられている舞の姿があった。
「ん?なんだお前、頭を撫でてほしいのか?」
「ちがっ…」
政宗は木刀を放りだすと、竜昌にずかずかと近寄った。そして左の腕でその首を抱え込み、右手でわしゃわしゃと竜昌の頭を撫でまわした。
「やっ、やめっ、まさむね様っ」
「よーしよしよしよし」
政宗がまるで照月(正宗の飼っている虎)にするように、力いっぱい撫でるものだから、竜昌の豊かな黒髪はあっというまにくちゃくちゃになった。
そんな二人の姿を見ながら、舞はふわりと笑った。
「政宗と竜昌は仲がいいね!まるで兄妹みたい」
「…そうだな」
「じゃあ私、信長様のところへこれを届けてくるね。秀吉ありがとー!」
再び舞がぱたぱたと足音をたてて、天守のほうへと去っていた。
「こらー走るんじゃない。こんなとこ走ったってお届けする時間は変わらんぞー」
「ごめんなさーい」
/ 372ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp