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【イケメン戦国】夢と知りせば覚めざらましを

第9章 【三成編】


「三成は軍師だろ?私を男だと思って、遠慮なく死地へ送り込め」
『死地…』
その言葉を聞いた三成はきゅっと眉根を寄せ、その眼が一瞬、切なく潤んだ。
「そうならぬように、私はこうして軍略や兵法を学んでいるのです…」
「私とて侍だ。三成が知略をもって殿にお仕えしているように、私は武芸で殿のお役に立ちたい」
「それはわかっています。ですが…」
やるせなさそうに見つめる三成の視線に気づき、竜昌はハッと気がついたように身体を起こした。
そして三成を元気づけるように、やや無理矢理に笑みを浮かべながら、その手で大きく三成の肩をバンと叩いた。
「安心しろ!三成が立てる策ならたとえどんな策でも、必ずや敵を蹴散らして、ここへ帰ってくるから!」
三成は、その竜昌の笑顔に答えるように、ふわりと笑った。その瞳の奥にはまだ、ひとかけらの切なさを残して…。
「…約束ですよ?」
─────私の元へ。
「うん!」
満面の笑みで返事をすると、竜昌は少し照れたように視線を逸らした。
「…しかしすごいな~三成は。この本、全部読んだの?」
「ええ、御文庫にある本は、少なくとも三度ずつくらいは読んだはずです。しかしまた読み返すたびに新たな発見があって、なかなか虫干しも書庫の整理も進まなくて」
「ふぇ~」
感嘆の息を漏らした竜昌は、手近にあった書物を手にとってパラパラとめくった。
「その本も面白いですよ。あ、それは下巻ですね。確か上巻がそのあたりに…」
「いいんだ三成、私はこういうのがからっきし駄目で…見るだけで眠くなってくる…」
書物を手の中で弄びながら、竜昌は縁側の柱にもたれかかり、大きく欠伸をした。
三成もそれを見てクスリと笑いながら、手に持った書物に再びを視線を落とし、没頭していった。


それからどれくらいの時がたっただろう。「っくしゅん」という竜昌のくしゃみで、三成は我に返った。
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