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とても言えない

第1章 1


「はあ?じゃないよ。好きが嫌なら愛してるがいい?」
「いや、……ちょっ、」
「冗談じゃありませんよ。誰がこんなっ……」
私は言葉に詰まってしまう。
喋り出した観月も、こちらを見るなり舌がもつれたように口を止めてしまった。
生っ白い顔が、火照ったような色をしている。
「ほら、もう見たらわかるっしょ?
イヤミとかごまかしとか抜きでちゃんと話しなよアンタたち。見てる方がしんどいわ!」
言うだけ言って、肩を怒らせて歩き去っていく耀美は振り返りもしない。
途方にくれたような気持ちでそれを見送って、観月を見る。
まだ赤い顔。

……これは、今なら完膚無きまでにやり込められるのでは?



「……おやおや、観月。図星かな?
いいよ、言ってご覧よ。……ほら」
今までにないくらい気を張って声を出した。
途中で声が詰まったけれど、出来るだけ余裕を見せて。
上から目線という言葉をそのまま再現すべく、ゆったりした視線を送った。
大丈夫。あちらはあんな真っ赤な顔なのだから、あくまでも余裕のある態度でいればいいはずだ。

そんな私の考えとは裏腹に、観月はこちらの顔を見るなりはっとした顔をして、にやりと笑う。
「そんな赤い顔では繕った態度が台無しですよ?
ねえ、沖田さん。
貴女こそ、僕に言いたいことがあるんじゃあ、ありませんか?」
喉がぐうっと音を立てそうになるのをこらえる。
……自分の顔が熱いのには、気づいていた。
それでも、負けたくないのだ。

「ほら、言ってみたらどうです?」
「はっ、誰が。そちらこそ言ってみたらいいじゃないか」

顔の熱さは治まる気配もない。
私と観月の間には、みたびの火花。



……好きだなんて、言えるわけない。

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