第8章 増えた愛
遥side
「よぉ、遥。」
「川口さん!おはようございます!」
「おはよ、遥。」
「山田さんもおはようございます。」
朝食を取るためにぞろぞろと食堂に集まってきた。
ただ、その中には中原さんの姿は無かった。
あの出来事から姿を見なくなった。
「あの。中原さんは今日も居ないんですか?」
「そうみたいだな。」
仕事場には顔を出しているみたいだ。
「なんだ?寂しいのか?」
川口さんと山田さんが心配そうに顔を覗いてくる。
「いえ。・・・僕のご飯が美味しくないのかなって。」
「そんな事ねぇよ。すっげぇ美味いからよ。」
「そもそも、美味しくなかったらこんなに人来ないって。遥が来る前は朝食時間、誰一人としてここに来なかったんだから。」
「それならいいんですけど。」
「・・・よし!俺からあいつに言っておく。遥が寂しがってるってな!だから元気出せ。」
「ありがとうございます。・・・僕、坂間さんの所行ってきますね。」
「おう!」
僕は朝食を持って遼くんの元へ向かった。
ドアを3回ノックし、ドアノブを回す。
「朝食持ってきました。」
「あぁ、ありがとう。」
調べ物をしている手をやめ、すぐにご飯を食べ始めた。
「うん、今日も美味いな。」
「ふふ。よかっ・・・うっ!」
「遥?」
突然、気分が悪くなった。
何かが戻って来る感覚。
吐き気?
そう思い、急いで部屋を出てトイレへ向かった。
「うえぇっ。はぁ・・・はぁ・・・」
急に・・・どうしちゃったんだろう。
・・・まさか・・・ね?
「妊娠・・・ですか?」
「っ!」
振り向くと須賀野さんが立っていた。
「いや、・・・これは・・・違うと思います・・・」
「根拠は?」
「・・・わかりません。けど・・・」
「けど、違うと信じたい。ですか?」
「・・・はい。」
須賀野さんが困ったように眉を下げる。
「遥さん。」
「遥っ!!」
遼君が慌ててトイレに入ってきた。
息を切らしている。
「どうした?!大丈夫か!?」
「だ、大丈夫・・・」
横目で須賀野さんと目を合わせると、ため息をついて、どこかへ行ってしまった。
「・・・部屋に戻ろう。心配かけてごめんね。」
「なんともないならいい。」