第5章 恐怖心と恋心
遥side
「考え直した。別に結婚なんかしなくてもお前を守れる。ここに居るだけでいい。仲間ってだけでいい。」
僕は何も返す言葉が出てこず、ただ、坂間さんを見つめていた。
何やってんだ、僕。
嫌だって返さないと。
だってこの人の事好きなんでしょ?
だったら結婚の話はなしでもせめて付き合ってる状態でいたいはず。
「その方がお前も楽だろ。俺といるより、他の奴といる方が楽しそうだし。無理に押し付けて悪かった。」
違う・・・そうじゃない。
貴方といたい。
「安全になったら、お前を返す。それまではここにいてくれ。」
坂間さんは・・・やっぱり僕の事何とも思ってないの?
Ωだから・・・性処理としか・・・
僕は好きなのに・・・
僕の一方的な想いだけだったんだ。
そうだよね。
「・・・わかりました。」
そう答えるしかない。
この人がそうしたいって言うんだから。
僕の我儘を聞いてもらうわけにはいかない。
坂間さんはホッとしたような・・・でもどこか困ったような表情をして部屋を出ていこうとした。
「あっ・・・遥は何か話たいことなかったのか?」
「えっと・・・何でしたっけ・・・忘れました。」
「そうか。」
そうやって誤魔化し、坂間さんを部屋から出した。
すぐに告白してれば良かったな。