第11章 幸せな家族
遼side
「拓真・・・こうなってしまったのも俺が全て悪いんだ。すまない。」
「・・・。」
拓真は何も言わず頭を抱え込んでいた。
拓真の体に異常は無いらしい。
「・・・昔、猪田と対立した時、アイツの目の前で家族を殺した。・・・初めはそんなつもりは無かった。アイツの父親があの薬で世界を変えようとしていた。それも残酷な。」
猪田の父親もヤクザだった。
あの薬を使い、自分の命令通りに動く世界を作り上げようとした。
お互い戦争し合う世界だ。
猪田の父親は少し変わっていて、人が殺し合う姿を楽しんでいた。
俺たちはそんなのを望んでいなかった。
だから、殺さざるを得なかった。
その時、たまたま目の前に猪田がいた。
アイツの顔は絶望していた。
きっとそれが復讐心を燃やしたんだ。
初めはアイツも普通の人間だった。
俺とも昔は仲がよかった。
それが父親に影響されたのか、どんどん変わっていった。
「アイツを止められなかったのも俺の責任だ。」
「・・・確かにあなたが事の発端なのかもしれません。けれど、真実はもう誰にも分かりませんよ。猪田は死んだのですから。それに・・・今の話を聞いていると、猪田の精神的な所に問題があったかと思います。・・・あくまでも俺の考えですけど。」
「・・・本当にすまない。」
「・・・今は遥の無事を祈りましょう。」
数時間後、手術室の赤いライトが消え、医者が出てきた。