第10章 愛しているから
遼side
パーン!
パーン!
2つの銃声。
倒れたのは、猪田とその手下。
「はぁはぁ!すみません、遅くなりました!」
川口と山田だった。
「お前ら!」
「意外と手小津ってしまいまして。」
よかった、ナイスタイミングだ!
「よくやった!」
俺は急いで遥の元へ走った。
「遥!もう大丈夫・・・っ!」
猪田と一緒に倒れ込んだ遥を仰向けにすると、俺の手にベトっとした赤い液体が付着した。
「うっ・・・さっき・・・倒れ込む瞬間に・・・この人に刺されちゃって・・・」
腹部には奥までナイフが突き刺さっていた。
このままだと赤ん坊は・・・
「あっははは!その顔!今まで見た中で1番最高だ!どんな気持ちだよ!?なぁ!あっはははは!あ・・・」
俺は躊躇なく猪田の頭をぶち抜いた。
返り血が顔に飛び散る。
「・・・じゃあな・・・」
遥の頭を抱え楽な体制にする。
「待ってろ、すぐ病院に連れていくからな・・・」
「遼くん・・・先に遼くんの怪我・・・治さなきゃ・・・血が・・・」
「俺は平気だ!それよりもお前っ・・・」
「じゃあ、この子から・・・助けて・・・お願い。」
俺の手を握り、腹の上に乗せる。
動いてる・・・
「まだ生きてる・・・早く出してあげないと・・・ね?その後は遼くん。」
「何言ってるんだよ・・・お前の方が重症じゃねぇか。」
「いいの・・・大丈夫だから。遼くんとこの子が居なきゃ・・・僕生きてけないよ・・・この子だってそうだよ。生きたいって言ってる。・・・僕じゃなくて・・・この子を優先して。・・・僕はどうなってもいいから。」
「っ!俺だってお前が居ないと!」
遥がそっと俺の頬に手を当て血を拭った。
「遼くんなら大丈夫・・・きっと・・・」
そう言って意識を失った。
その後は近くの病院まで急いだ。
遥はまだ死ぬと決まった訳じゃない。
絶対に2人とも助ける。
その時の俺はその事で頭がいっぱいで何も考えられなかった。
「万が一の場合は、お子さんと遥さん、どちらを選びますか?」
医者のその言葉に、俺は「子供だ」と応えた。
本当は遥を選びたかった。
ただ、それが遥の頼みだったから俺は自分の意志を捨てた。
手術は何時間も続いた。
手術室の前で俺は2人の無事を祈った。