第3章 新しい生活
遥side
「拓真・・・時間がないんだ。」
「どういうことだよ。」
あと2分・・・
急がなきゃ。
拓真とのキスを止め、少しだけ突き放す。
拓真が僕の携帯を渡してくれる。
やっぱり、あの時落としたんだ。
充電もちゃんとある。
「ありがと。」
「おぉ。それよりどういう事だよ。」
「・・・もう、僕の事は忘れてほしい。この家にも戻ってこない。」
「はぁ!?何言ってんだよ!それ別れるって事か?!」
「・・・うん。」
「けど、家出る事はしなくてもいいだろ?!」
拓真、怒ってる。
そうだよね。
理由もなしにこんなこと。
でも言えないんだ。
「・・・僕に関わると危険だから・・・だからもう忘れて?これまでの事も全部。」
「ふざけんな!!何今更言ってんだ!忘れる訳・・・」
「お願い・・・これ以上はもうここにいれないんだ。」
「・・・他に好きな奴でも出来たのか?何かに脅されてるとか。」
「違うよ。拓真の事は今でも大好き。」
「・・・せめて、連絡だけも取れないのか?」
「坂間さんが許してくれるか・・・あっ・・・」
「坂間?誰だよ。」
「・・・知り合い。」
拓真は怪しいという表情をする。
つい口が滑っちゃった・・・
1分を切った・・・
もう出なきゃ・・・
「僕、もう行かなきゃ・・・」
「っ!待て!」
部屋を出ようとする僕の腕を掴み、止める。
「やっぱり嫌だ。行かないでくれ。」
「・・・ごめん、拓真。」
その手に僕の手を被せ、優しく引きはがす。
「じゃあね、拓真。おばさんによろしく。いつか恩返ししますって伝えといて。」
「なんだよ・・・なんなんだよ!」
拓真が怒り、泣き叫ぶ声を背に玄関に急いだ。