第2章 笑わせたいのに
「ここです。」
「え・・・ここ、拓真の・・・」
須賀野が車を運転し、目的の場所へ。
それは、遥が住んでいる家。
「今は1人のようですね。」
「よし。遥。行ってこい。」
「え、行ってこいって・・・」
「時間がない。5分だ。」
遥はボーとしている。
「・・・坂間さん。急がないと。」
「・・・遥。あと4分だ。」
その言葉を聞いて慌てて車から降り家の中へ入っていく。
イヤホンを耳に付ける。
イヤホンから聞こえてくるのは、階段を駆け上がり「拓真!」と呼ぶ遥の声。
「・・・坂間さん。ひどい顔ですよ。」
「仕方ないだろ。」
『遥!?』
『拓真ー!』
2人が抱きついているのが分かる。
『良かった・・・無事で。連絡も取れないし。全然帰ってこないし。どこ行ってたんだよ!』
『ごめん。ごめんね。』
2人がキスをする音。
聴きたくない。
聴いていい思いがするもんじゃない。
俺はイヤホンを投げ捨てる。
「だから、物に当たるのは良くないです。」
「・・・チッ・・・」
アイツの前だと嬉しそうに話すんだな。
俺だって・・・遥を喜ばせたい。
笑わせたいんだ。
「っ!坂間さん・・・聴いた方が・・・」
「?」