第7章 In the fog、LittleLady
よいしょ、と降りる気配がしたから手を差し出したら豆鉄砲でも食らったかの様に目を丸くして固まる。
『………』
「降りるのだろう?手を貸そう」
『え?あ…ありがと…』
気恥しそうに顔を逸らして遠慮気味に重ねられた手は氷の様に冷たかった。
『ご苦労様、ポチ。ここからは箒かっ飛ばして戻るから小さくなって』
"はい"
-ぼふん-
小さくなったフェンリルを胸に抱くと箒に座って宙に少し浮いたところで此方を振り向く。
『山頂での出来事はアタシ達だけの秘密ね。バレたら色んな人から殺意向けられそうだから』
困った様に笑うと、ふわりと高くまで飛んで流星のよ様な速さで飛んで行く。
「それは多分、私の台詞だ………」
※※※
"主"
『ん?なぁに?』
王都が見えてきて少し箒の飛行速度を緩めると肩に乗ったポチが話し掛けて来た。
"あの方は主にとってどんな方ですか?"
『あの方?フエゴの事?』
"はい"
何故そんな事を聞くのだろう。兎も角だ。フエゴはメレオさんの弟君で王族ヴァーミリオン家の長男でー…んーとシェリーの兄貴分で国を護る同じ魔法騎士団員で………
『うーん仲間?お兄ちゃん?』
"そうですか"
『どうしてそんな事聞くの?』
"いえ…僅かな時間でしたが大層安心して眠られてたので"
『………え』
"メレオレオナ殿との旅を終え実家に戻られてから、あまり休まれてなかったので実家よりは居心地の良い相手なのかと"
『………っ』
多分ポチは深い意味で言った訳では無いのだろうけど変に意識してしまって、ほっぺたに熱が集まる。
"主?"
『ほら、もうアジトに着くから』
無理矢理話を終わらせて急降下する。地面スレスレで急停止して箒から飛び降りるとポチが目を回していた。
『ふふふ。さーて仕事仕事』
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