第6章 Dancing on ice、LittleLady
『そう…腹ぺこなのね。相手は歯応えの有りそうな虎よ?まだ子供のアナタにあんな硬いもの食べれる?』
この場に居る誰でもない…でもナニかと会話をする。
『え?子供じゃない?うーん…まぁもうこんなにも大きくなっちゃってるけど…アタシを選んだ当初は仔犬みたいだったじゃない』
-グルルルル…-
と低い呻き声が聴こえる。
『分かった分かった。出ておいで………ポチ』
まるでずっとそこに控えていたのを隠していた様にスーッ映し出された一匹の大きな狼。雪溜まりの様にキラキラとした体毛。大きさはチェリー一人くらいなら背に乗せれるくらいの…狼にしては、かなり大きい。
「そんなちっぽけな狼がワタクシの鋼虎を食うだと?笑わせるな!」
『…これは、多分人類にとっての機密事項』
一同「!?」
『悪いけどコレを見た貴女は生かしては置けない。だけどコレを使わなきゃ勝てないくらい貴女は強い人…誇りに思って逝って』
「は…?」
『氷精霊魔法』
一同(せ、い…れい?)
『フェンリルの吐息』
※※※
本来、精霊が宿るのは炎、水、風、地の属性を司る魔導士の中で選ばれた一人のみだと言い伝えられていた…否、伝えられている。他の属性に精霊だなんて聞いた事すらも無い。だが現に彼女は氷の狼を従え、そしてその魔法も手に負えない程の強力さを今この現状が知らしめてる。
『…やり過ぎ』
"申し訳ありません、主"
氷の精霊フェンリル。他属性の精霊の発見は良くも悪くも時代に変革をもたらすだろう。だからコレを容易に世界に報せる訳にはいかない。最重要の機密事項にした。
「いいかい?君達。これは誰にも口外してはいけないよ。この事実が広まればチェリーは世界中から狙われるだろう。捕まれば実験体間違いなしだ。彼女はクローバー王国にとって必要不可欠な存在…チェリーを守る為の約束だ。いいね?」
一同「はいっ!」
胸の前で敬礼をする自団のヤミ、シェリー、ウィリアムといち早く援軍に駆け付けてくれた他団のフエゴレオンとノゼル。この五人なら安心だろう。一人で隠し事を隠し通すのは大変だ。彼等がきっと彼女を守ってくれる。
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