第3章 Please kiss me、Girl
魔法騎士団に入団して半年が過ぎた頃。一部の魔法騎士団から数名ずつ集められる。殺伐とした空気の中をユリウス団長が一つ、咳払いをすると刺さる様な視線が一気に集中する。
「えー…君達に集まってもらったのは他でも無い。新たな魔宮が発見された」
一同「!」
「スペード王国との国境付近の強魔地帯…しかも…」
ピンと人差し指を上に向ける。
「幻の天空島に存在する」
「ほう…でこのメンバーなのは?」
「状況は最悪だ。強魔地帯、スペード王国との国境、未知なる天空島………となると最近功績を上げてる君達しか頼めないだろう?」
選ばれてるメンバーは紅蓮からメレオさんとフエゴ、銀翼からノゼル。そしてユリウス団長率いるヤミ、シェリー、アタシ。
「じゃ、直ぐに出発してくれ」
※※※
「うっわーこのマナの暴れ具合ヤバくない?ってゆーか寒いんだけど」
「少しは黙らんか莫迦者!スペード王国との国境だから寒いのは致し方あるまい」
「天空島ってアレ?どうやって行く?箒じゃ無理だよな?俺の電磁浮遊で何とかなるかな?」
「全員を運べるのか?」
「………無理かな」
「では何故言う」
イマイチ纏まりの無いチームの会話を聞きながら考える。シェリーの雷魔法の電磁浮遊ならこの暴れまくるマナを避けながら天空島へ行けるけど…シェリーの今の魔力だと全員は運べない。勿論箒で飛んで行くなんて無理だし…アタシの魔法で氷の道を作る事は出来るかも知れないけど…
『………地上から三千メートルは余裕で離れてる』
ギリギリの高さまで箒で飛んでから道を作ったとしても二千メートルはある訳だが果たしてその距離の道は作れるか…そもそも作れたとしても、そんな長い道に強度は保証出来ない。
「策でもあるのか?チェリー」
『メレオさん…あるにはあるんですけど…一か八かですね』
一同「あるのか…」
「じゃあやれ!今すぐやれ!」
『………じゃあノゼル、力を貸して』
「?」
※※※
「成程…水銀を凍らせて屋根付きの氷の道を作るとは考えたな。銀を含んでるなら強度もあるし………まぁ寒いけど」
わしゃわしゃと乱暴に姉君の頭を撫で回すヤミ。この人は事ある事に姉君の頭を撫で回す。姉君の細い首がいつか折れるんじゃないかと冷や冷やする。