第5章 試験×ノ×開始
「凄く綺麗……」
故郷やくじら島は夜になると暗闇に包まれるので、こんな景色は生まれて初めてだった。
暗闇の中に光る無数の光が幻想的だ。
まだ見ていたい気持ちもあるが、他の場所も探索しなければ!
「この匂い……」
今まで嗅いだ事のない匂いだったが私には分かる!
これは食べ物の匂い!!
匂いの元を辿ると、食事処だった。
見覚えのある受験者達が美味しそうにご馳走を頬張っている。
「…………」
食べたい。
もの凄く、食べたい。
しかし、お金が足りない。
何か食べ物は無いかと荷物袋を漁ってみるが、芋が3つ。
生でも食べようと思えば食べれるが、この美味しそうな匂いを嗅いだ後では満足出来そうにない。
芋様ごめんなさい!
どうしようか考えてうろうろしていると、背後から声を掛けられた。
「お嬢さんも合格してたのか!」
「ト、トンパ……」
どうしよう……あの光景を目の当たりにしてしまった為、顔を合わせづらい。
挙動不審になっている私を気にする事なくトンパは続けた。
「ちょうど良いや! 一緒に食事でもどうだい? 俺の奢りで!」
「え、本当に!? 是非!!」
あぁ、分かってる。 単純だって。
そうしてトンパと一緒に食事をする事になった。
「俺が注文してくるから、席で待っててくれ」
なんて親切なのだろうか。
どうしてこういう時、時間が過ぎるのを遅く感じるのだろう。
ウキウキと待っていたが、周りの様子が気になる。
チラチラとこちらを見てはクスクスと笑っている。
………私って、そんなに田舎臭いのかな…
あまり気にしてなかったけど、こういう反応されると少し目頭が熱くなる。
本来はこの人達の反応が普通なのかも。
今まで出会った人達が、異常に優しかっただけなのかな……
「やあニーナ❤︎」
「……ヒソカ」
「何かあったのかい?」
そういえばこいつが1番私のこと馬鹿にしてるっけなぁ…
ハッキリ言われてたからダメージが少なかったのかも。
「……私って、そんなに田舎臭いかな……」
「………」
何だその「え、今気付いたの?」って顔は!
「黙っていれば田舎臭いとは思わないよ❤︎ 黙っていれば❤︎」
そっかぁ………ってこっちは真面目に聞いてるのにィッ!
ヒソカに相談はだめだな。絶対に。