第5章 試験×ノ×開始
「がむ?」
「美味しいから食べてみなよ♣︎」
促されるまま口に入れると、何とも不思議な食感だった。
噛み千切る事ができないのだ。
「くくくっ」
「何笑ってるんですか!?」
「それは飲み込んじゃダメだよ。 噛むだけ♦︎」
噛むだけ?
一体何の目的でこんな物を作ったのだろうか。
腹を満たせない食べ物なんて……
「………」
でもちょっと……癖になるかも。
「フゥ…」
「!?」
「こうやって膨らませる事もできる♠︎」
ヒソカがフゥっと息を吹き出すと同時に、口元に球体が現れた。
指で突こうとしたら、パンッと消えてしまったが。
今の何!?
「やり方を知りたいかい?」
私はぶんっぶんっと上下に大きく首を振った。
それから残り時間、ヒソカに風船ガムの膨らませ方を教えてもらった。
終ーー了ーー!!
「!」
「終わったみたいだね」
扉の向こうからアルトゥールの声が響いてきた。
部屋の中を見渡すと、ざっと200人ぐらいだろうか。
あのウサルーを捕まえるとは、なかなかやりおる。
「一次試験合格者210名! これより二次試験会場へ向かう!」
黒服に身を包んだ男達に案内されたのは、飛行船だった。
「おおー!」
数時間ぶりの地上はだいぶ日が暮れており、出た場所ももう遊園地ではなかった。
「これに乗るのか〜楽しみ!」
「くっくっくっ♣︎」
「な、何?」
「いーや何も❤︎」
こいつぅ〜!!
また馬鹿にしてる笑いだ!
もう何度も馬鹿にされてるから間違いない!
ヒソカに対して腹が立っていたが、飛行船の中へ足を踏み入れた途端どうでも良くなってしまった。
「2時間後に二次試験会場へ到着だ! それまで自由時間とする! 解散!」
アルトゥールの合図と共に、部屋に残る者と出て行く者で別れた。
私はどうしようか……
部屋の中には特に何もないし、飛行船の中を探索するのも悪くないかも。
「ヒソカ、一緒に飛行船の探索しない?」
「ボクにとって飛行船は珍しくないから、遠慮しておくよ❤︎」
……………ねぇ、普通に断れないの?
仲良くなれたと思ったのは私の方だけだったらしい。
まあ、仕方ないよね。
だって、風船ガムの練習中に勢い余ってプッとヒソカにガム飛ばしちゃったし………
あの時は生きた心地がしなかった。
根に持つタイプなのかなぁ……困ったなぁ…