第5章 試験×ノ×開始
「そんなに目を血走らせて、それじゃあサル以下になってしまうよ?♦︎」
「ヒ、ソカ」
急に身体の自由が戻り、男に向けていた視線をヒソカへと移した。
「!」
ヒソカは私の顔を驚いた表情で見つめた。
自分が今どんな顔をしているのか分からないが、私も自分自身に驚いている。
しかしそれも一瞬の事で、またいつもの顔に戻っていた。
「ハイこれ❤︎」
「え? どうして…」
ヒソカは私と目線を合わせる様にしゃがんでウサルーを差し出した。
「君が捕まえた子だよ」
捕まえて横取りされた獲物。
横取りされるのも悔しいが「はいどうぞ」と手渡されるのもなんか悔しい。
欲しいけど素直に受け取れない。
葛藤している事に気付いたのか、ヒソカが口を開いた。
「今合格すれば、残りの1時間は別室で自由に過ごす事が出来る。そこでイイ物をあげよう❤︎」
「良い物!?」
我ながら単純である。
物で釣られるとは。
しかし、何を貰えるのか気になるので従うしか選択肢はない!
「ありがたく頂戴します」
「いいコだ❤︎」
ヒソカからウサルーを受け取り試験官のもとへ向かう。
「お! やっと来たか! どれどれ」
アルトゥールはウサルーが負傷していないか確認し始めた。
にしても、ヒソカは1回だけでなく、2回もウサルーを捕まえた。
一体どんな凄技を使ったのだろうか……気になる。
「最初の合格者だ!この扉の向こうで残り時間を自由に過ごしてくれ」
「はい」
試験官が言っていたように、私とヒソカが最初の合格者らしい。
シーンと静まり返っている部屋の中を、ヒソカの後に続いて歩く。
向い側まで来ると、ヒソカは壁に背を向けて座りこんだ。
私も同じ様に腰を下ろす。
「サルじゃないから」
「先に言われちゃった♣︎」
「サルみたいだね❤︎」って言おうとしてたのはお見通しだ!
私はいち早くそれを察知し、先手を打つ事に成功した。
くれるって言ってた良い物は何だろう?
早くくれないかな。
「そんなに見つめないでくれよ。 興奮しちゃうじゃないか❤︎」
「…………」
婆様、母様。
私はこの男とどう接すれば良いのか、時々わからなくなります。
「そんなに待ちきれないのかい? しょうがない子だ❤︎」
「お?」
手渡されたのは、ほのかに甘く香る小さな物。
食べ物だろうか?
「それはガムだよ」