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【YOI夢】ファインダー越しの君【男主&オタベック】

第4章 エピローグ


改めて守道が心の中でそう決意していると、自信なさげな声が聞こえてきた。
「…イヤだったのか?」
「ん?」
「もしかして貴方は、他に行きたい所があったのか?」
「いや。まあ…確かに、ここ以外に幾つか目星はつけてたけど」
守道の返事に、オタベックは柱の陰に身を隠すと、今にも消え入りそうな声で呟いた。
「それでも俺は…貴方と一緒にいたかったから」
『英雄』の彼とはまるで異なる気弱そうな仕草に、守道の心は思い切り揺さぶられる。
(無意識でも計算づくでも、この子結構小悪魔要素持ってるよな…)
しかしそんなオタベックに、守道が満足感と優越感を覚えているのも事実であった。
これまで「欲しいものは決して手に入らない」と諦めるフリでやり過ごしてきた自分が、初めて「離したくない」と思った相手。
彼の名の通り、まさに守道にとってのオタベックは、途方もない砂漠の中から見つけ出したアルティン(黄金)そのものだったからだ。
柱の向こうに隠れたままのオタベックに近付いた守道は、自らもその柱に背を預けると、言葉を綴った。
「──俺は今ここに、君の傍にいる。それが俺自身と…君への答えだ」
「…」
守道が、背を向けたまま柱越しにオタベックに向かって手を伸ばすと、やがて少しだけ汗ばんだオタベックの手が重ねられる。
「ずっと、一緒にいられたらいいのに」
「それは無理だよ」
「判ってる。何もそこまでハッキリ言わなくても…」
「昨今IPS細胞が話題になってるけど、流石に俺も君も寿命はあるからね。そうだな…あと60年ちょっとで良ければ、喜んで付き合うけど?」
「…バカ」
力強く握られた手の感触に、オタベックは目元を細めた。
「俺はここで建築を学んで、将来君にもカザフにも、一目置かれるような存在になってみせるよ」
「貴方ならきっとなれる。寧ろ、なって貰わないと困る。俺のこれからの夢の実現に、貴方は不可欠だから」
「スケートで金メダル獲る事じゃなくて?」
「それとは別の夢。今は競技を頑張るけど、現役を退いた後、俺はこの街に大きなスケートリンクを作りたいんだ」
競技引退後は後進の指導や、国内の才能のある子供達への門戸を拡大したい。
その為にも、新たなリンクの建設は必須だからだ。
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