第2章 初期刀
こんのすけに扉を開けて貰い、本丸の玄関より辺りを見渡す。
とても綺麗なお屋敷だ。
そして、広い。廊下が一直線に長く延びている。
キョロキョロと四方八方見渡していると、奥から声が聞こえた。
「ねぇ。アンタが主の妹??」
長い黒髪を束ねた、赤い着物の美少年。
「加州殿!左様で御座います、こちらが我々の新しい主様ですぞ!!」
「加州…というのか。よろしく頼む」
「…加州清光。悪いけど、俺の主はあの人だけだから。アンタはその妹ってだけ」
目も合わせて貰えない、分かりやすい程の”拒絶”
「加州殿!!」
「…一応、本丸の案内はしてあげる。ついて来て」
ふいっと軽やかに後ろを向き、歩き出す加州くん。
「…すみません、主様…」
「なに、気にしないでくれ。案内してくれるそうだから、行こうか」
「はい!」
加州くんの後ろをついて行きながら、こんのすけに審神者についてなどの基本的なことを教わっていた。
この加州くんが、私の初期刀になるのだと。
「別に望んで初期刀になった訳じゃない。たまたま俺だったってだけ。運が悪かったね、俺で」
こんな調子だけど…。
でも、ちゃんと案内してくれるあたり、本当は優しいのだろう。
これから仲良くなれるといいな…
「…はい、ここが厨房。ところでアンタ、料理出来んの?」
「あぁ。小さい頃におばあ様に習って一緒に作っていたから、多少は出来ると思うぞ」
「…そ。ならいいけど。俺、料理とかあんまり得意じゃないし」
「今まではどうしていたんだ?」
「…そのうち分かるでしょ。ほら、次行くよ」
さっさと出て行く加州くんに代わって、こんのすけがこっそり教えてくれた。
料理が得意な刀剣男士もいるのだと。
それで納得した。
何故なら、兄様も料理なんてしたことがない人だったからだ。
(兄様が料理をする姿…見てみたかったんだけどな)
料理が得意ではない加州くんと兄様が並んで料理に悪戦苦闘していたら…と考えて少し笑ってしまった。
「はい。ここがお風呂場」
「露天風呂まであるのか…凄いな」
どこかの旅館のような、広くて綺麗な露天風呂。
そして
「ここが洗濯場」
「ここが畑」
「ここが馬小屋」
「ここが中庭」
「…広いな」