第7章 池田屋
私が宇都宮城出禁になって数日が経った。
「成程…、それで主さんは元気が無かったんですね。それに、みんな稽古場で鍛錬してたし…」
「あぁ。皆が鍛錬に励む様はとても頼もしいし、良い事なのだが…正直、することが無くて寂しい」
近頃は近侍の長谷部くんまで、鍛錬や宇都宮城への出陣で傍にはいない。
いれば叱られてばかりでたまに窮屈と思うことも…無くはないが、いないとなると…それはそれで寂しいものだ。
「へぇ。よっぽどみてぇじゃねーか。その手腕、見てみたかったがな」
「そうだね兼さん!」
先程、鍛刀によって仲間になった
和泉守兼定
堀川国広
現在の異様な本丸の状況を説明しながら
一緒にお茶を飲んでいた。
「主!!失礼致します!!」
たぁんっと勢いよく襖が開かれ、長谷部くんが入って来た。
「よぉ、長谷部じゃねーの」
「なっ!? 和泉守に堀川!? 何故お前達が主のお部屋で茶なぞ飲んでいる!? というかいつの間に顕現した!?」
「つい先程な。二人は私がここに呼んだんだ。…ところで、何か急用か?」
「はっ…そ、そうでした…。主、先程政府から速達でこちらの書簡が届いたのです」
「速達…すぐに目を通そう」
そこには、またまた簡潔にこう書かれていた
「出陣要請。池田屋」
「なっ…池田屋ですって…!!」
たぁんっ!!!!!
またまた勢いよく襖が開いた
「こ、こら大和守! 主のお部屋に入る際は一言…」
「主…池田屋へは僕を…僕を隊長に任命してください!!」
安定くんの真っ直ぐな瞳に
大きな覚悟と決意を見た
「長谷部くん、皆を招集してくれないか」
「かしこまりました、すぐに!!」
バタバタと走っていく長谷部くん。
神妙な表情の安定くん。
心配そうな表情の堀川くん。
何かを考えているような兼定くん。
「…余程、無理難題のようだな。池田屋への出陣は」
「あっ…えっと…。正直…今の練度では…厳しい戦いになるかと…」
「それでも…僕は…」
「安定、根詰めすぎんじゃねーぞ」
「…」
静かに出て行く安定くんに
掛ける言葉は無かった