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とうらぶ夢倉庫(長編館)

第19章 梅雨(水心子正秀ver) ★






梅雨入りしたとは聞いていたが
まさか急に降り出してくるとは。



とある軒下で、ずぶ濡れになりながら、空を眺めていた。



さっきまではあんなに日差しが照り付けていたというのに。
少しの距離だから、と高を括った数刻前の自分を恨んだ。

そして更に残念な事に。
本日我が本丸の刀剣男士一同は、出陣や遠征でみな出払っていた。


故に、迎えが来ることは、無いのである。



「参ったな……」



そう、呟いた時だった。







「貴女は……!?」





声がした方に振り返ると、そこには見覚えのある姿があった。






「水心子くん…!! 久し振りだな、今日は一人なのか?」

「あぁ…。というか、貴女こそ一人で何を…って、ずぶ濡れじゃないか!!?」

「あはは…。雨に降られてしまって…」

「…全く、今日は午後から雨が降ると天気予報が報じていただろう。まさか、見ていなかったのか?」

「うっ……」





目を逸らすと、目の前の水心子くんに盛大な溜息をつかれてしまった。
自分の情けなさにいたたまれない心地になっていると。
水心子くんは軒下に入り私の隣に来ると、スッと自分が差していた傘を私に差し出した。




「使うといい」

「えっ!? い、いやしかし…それでは水心子くんが…」

「私なら平気だ。帽子も外套もある。貴女よりは幾分と雨を凌げるからな」



そう言って傘を受け取るよう促してくる彼に、どうしたものかと悩んでいたら



「ふえぇぇぇぇぇん!!!!!」



近くで泣き出してしまった幼い女の子と、そのお兄ちゃんらしき幼い男の子を見付けた。
どうやら、この小さな兄妹も、傘を持っていないようで。




「………、水心子くん、すまない。傘を頂けるだろうか」

「えっ、あ、あぁ…」





私は水心子くんから傘を受け取ると、先程の幼い兄妹の元へ走った。




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