第3章 鍛刀
「………意外」
「ん? 何がだ?」
朝。ご飯を作り終え、加州くんと二人で食べている時だった。
何故か、箸の止まる加州くん。
「いやだって、あの人の妹なんだからもっと酷いのが出てくると思ってた…」
「昨日、料理はそれなりに出来ると言わなかったか?」
「あの人だって出来るって言ってあの有り様だったし?」
「そんなに酷かったのか…」
「もう大変だったっての」
「そうか…それはそれで、食べてみたかったな」
「やめときなよ、お腹壊したく無ければね」
昨日とは違い、ちゃんと目も合わせてくれるし
笑ってくれるようになった。
笑うと、結構可愛いんだな、加州くんは。
「…なぁ~に? 人の事じっと見てさ」
「あぁ、可愛いなって思って」
「ばっ…!? 馬鹿じゃないの!?///」
あっ、また目を逸らされてしまった…。
難しいな…。
しかし、残さず全て食べてくれるあたりも可愛いと思う。
「さて、と。少し稽古場へ行って来る」
「は? 何しに??」
「朝は神気に溢れているからな。舞い祈るのに丁度良いんだ」
「しんき…? まいいのる…?」
「ふふ、巫女の仕事…と思っておけば良い」
「…そ。…ねぇ、言っておくけど…稽古場、逆だからね」
「む?」
「アンタ昨日案内してあげたでしょ」
「そうだったな…。確かこの廊下の突き当りを左だったか?」
「あぁもう! こっち付いて来て!!」
--------------------------------
まさか。妹の方も方向音痴だったとはね。
「はい。ここが稽古場」
「助かった、ありがとう加州くん」
「だから、清光でいいってば。…それより、見ててもいい? その”巫女の仕事”ってやつ」
「あぁ、構わぬが、特に面白くもないと思うが…」
「面白くなかったら適当に帰るから」
「そうか、ならば端の方で見ていてくれるか?」
「りょーかい」
言われた通りに端に移動して腰を下ろした。
巫女とか、正直よく分かんないけど。
石切丸的なやつなんだろうか。
祓い清めたまえ~的な。
…あ。動いた。
ゆっくり行ったり来たりしてる。
…何してるんだろ?
…あ。
一瞬で、目を奪われた。