第3章 小さな手をいつまでも…
秀吉は町娘達の相手をしながら、ちらりとの居た方へと視線を向けるが、そこに居たはずのの姿が無くなっていた。
秀吉「……?」
(どこへ行ったんだ!?)
町娘1「?さっき秀吉様と一緒に居た女の子?」
町娘2「随分と可愛らしいお嬢さんだったけど、妹さんか何か?」
秀吉「…あの娘は織田家ゆかりの姫なんだ。どこに行ったかわかるか?」
慌てた様子で辺りを見回す秀吉に町娘達は驚きを隠せずにいた。
町娘3「秀吉様が慌てるのは、織田家ゆかりの姫様だったからなのですね」
町娘1「その姫様なら、あちらの反物屋の方へ行かれるのを見ました」
町娘の一人が後ろを振り向きながら、一軒の反物屋を指差す。
秀吉「そうか、ありがとな。この礼はまたするから」
にっこりと笑みを返すと、再度町娘達は黄色い声をあげるのだった。
秀吉は急いで勘定を済ませ、足早に町娘が言っていた反物屋へと向かっていく。
反物屋へ着くと、店の中でが店の主人と親しげに話していた。
秀吉「こら!!!勝手に俺の側から離れるんじゃない!」
秀吉は、眉間に皺を寄せ、に声をかけながら近付く。
「あ、秀吉さん!もうお話終わったの?」
秀吉「は?」
振り返ったは全く悪びれた様子がなく、ニコニコと笑顔で駆け寄ってくる。
秀吉「お前な…どれだけ心配したと思ってるんだ」
「うっ…だって…お話の邪魔しちゃいけないと思って言わずに来たの。心配かけてごめんなさい」
しょんぼりと瞼を伏せながら謝るに、秀吉はそれ以上何も言えなかった。
秀吉「心臓止まるかと思った。もう勝手にいなくなるなよ?ほら、帰るぞ」
秀吉はすっと大きな手を差し伸べると、優しい笑みを向ける。
「…っうん!」
恐る恐る顔を上げたも安堵にも似た笑みを浮かべる秀吉にふにゃりと笑顔を向け、その手を握る。
店の主人と、先程秀吉を取り囲んでいた町娘達も、微笑ましい二人の姿に穏やかな笑みを向けるのだった。
秀吉「俺の側を離れるときはちゃーんと言っていくように!」
「はーい」
秀吉はその小さな手を離さないように、ぎゅっと握ったまま城へと帰って行くのだった。