第3章 小さな手をいつまでも…
「何か……みんな忙しそう……何かあったのかな?」
は仕立て終えた着物を抱え、城下へ配達に行くために門へと続く廊下を歩いていた。
秀吉「ん?、今から配達か?」
「あ、秀吉さん!うん、依頼されてた着物が仕上がったから、今から届けに行ってくるところなんだ」
反対方向から歩いてきた秀吉に声を掛けられ、足を止める。
秀吉「そうか、じゃあ俺も視察兼ねて一緒に行く」
「え?今、秀吉さん城下から戻ってきたんじゃないの?」
秀吉は一瞬ばつの悪そうな顔を向けるが、すぐにいつもの笑顔になる。
秀吉「いや?視察はしてない。ほら、荷物持ってやる」
「え?いいよ、少しだし持てるよ?」
秀吉「いいんだ、お前は素直に甘やかされとけ。な?」
ひょいとから風呂敷を取り上げ、にっこりと笑い掛けるとポンポンとあやすような手付きでの頭を撫でる。
「うん、わかった!ありがとう」
秀吉「ん、じゃ行くか」
ーーーーー安土城 城下ーーーーー
「わぁ、いつもよりも賑わってるね!」
秀吉「そうだな、もうすぐ秋祭りがあるから、その準備だろうな」
秀吉と共に城下へ配達のために訪れたは数日後に開かれるという秋祭りの準備でいつも以上に賑わいを増した城下を歩いていた。
秀吉「、はぐれて迷子になるなよ?」
「はーい」
を心配そうに振り返りながら歩く秀吉に対し、瞳を輝かせながら間の抜けたような声で返事をすると、キョロキョロと歩みを進めていた。
秀吉「全く……」
「わ、ぷっっ!」
溜め息をつき、ピタッと歩みを止めた秀吉の背中には思いきりぶつかってしまう。
「秀吉さん?!何で急に立ち止まったの?」
は鼻を押さえ背中から離れる。
秀吉「そんなに余所見しながら歩いてると危ないだろ?変な輩にぶつかって絡まれでもしたらどうするんだ?」
秀吉は腰に手をあて、顔を覗き込むようにして体を屈めてくる。
「う~ん…でも、その時は秀吉さんが守ってくれるんでしょ?」
当然のようにさらりとそのようなことを言われ、秀吉は苦笑するのだった。