第12章 ~願いよ、風に乗って届け~
「あ、政宗おはよう!」
家康の背中からひょこっと顔を出すと、ふにゃりとした笑顔で政宗に挨拶をすると、政宗も不敵な笑みから柔らかい笑みへとその表情を変える。
政宗「おはよう、。今日も可愛いな。誰かに髪を結ってもらったのか?」
「うん、家康に結ってもらったの。今から家康と簪を買いに城下に行くところだよ」
(政宗はサラッと恥ずかしいこと言うんだから…)
政宗「へーえ。家康がねえ…なかなかおもしれえ事になってんじゃねーか」
ちらりと家康と視線を合わせ青い瞳を細めると、再度不敵な笑みを浮かべる。
家康「…負けませんから」
政宗「ああ」
二人は静かな闘志を燃やしながら政宗は城内へ向かい、家康は城門の方へと足を進める。
はキョトンとした表情で首を傾げながら家康と共に城下へと向かうのだった。
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家康「何でよりにもよってこの店な訳…?」
明らかに不服そうな家康だが、無理もない。
幸村「あっ?文句あんなら来なきゃいーだろーが」
佐助「さん、君は人を喜ばせる天才だな」
幸村「俺はちっとも喜んでねー」
そう、が選んだ店は幸村と佐助が安土城下で開いている店だったのだ。
「ここの小物が一番可愛いんだよ!……どれがいいかなぁ…」
は、うーん…と小さく唸りながら目の前の小物を吟味していく。
佐助「今日もまた、この前とは違った雰囲気だな。誰かに結ってもらった?」
「うん!家康に結ってもらったの!すごいでしょ?!」
佐助「っっ……!やっぱり俺…」
幸村「止めろ、佐助」
家康「…あんた、どれだけこいつらに会ってるわけ?」
呆れたように言う家康が、ふと並べられた小物の一つに目を向けると、それを手に取る。
家康「これ貰ってくから」
幸村「あ?…ああ」
支払い箱にお金を置いたあと家康はの手を取り立たせると、さっさとその場から立ち去る。
「幸村、佐助くんありがとう!またね」
幸村「おー」
佐助「家康公が選んだ簪を飾るのか…羨ましい限りだ」
ボソッと呟く佐助に冷ややかな視線を送る幸村だった。