第10章 触れたくて………
は軽くお辞儀をして部屋から出ようとするが、何かを思い出したように二人に向き合う。
「針子仲間に頼まれていた反物があったので、今から反物を買いに城下に行ってきます」
信長「一人で行くのか?」
「はい。馴染みの店なので大丈夫ですよ。昼頃には戻ります」
秀吉「変な輩に襲われないように早く帰ってくるんだぞ」
信長「昼餉は貴様が帰って来てからにする。早々に帰ってこい」
「わかりました!じゃあ行ってきます」
パタパタと元気よく廊下を走っていく足音を聞きながら、信長と秀吉は溜め息をつくのだった。
信長「少々手を抜けば良かったか」
秀吉「見ようによってはそこらの町娘より女らしいですからね…」
そんな二人の気持ちなど知る由もなく、元気に城下へと向かうだった。
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ー安土城 城下ー
「よし!みんなに頼まれてた物も買えたし、帰ろう」
城下での買い物を終えたは足早に城へと戻っていく。
???「?」
(……?)
ふいに名前を呼ばれ足を止めると、声のした方へと視線を向ける。
「幸村に佐助くん!えっと…すごい荷物だけどお土産?」
幸村「土産なわけねーだろ。これ全部あの人達からの使いだ」
佐助「こんにちは、さん。ピクニックのあと謙信様と信玄様は公務があるから春日山城に帰ったけど俺達は二人にお使いを頼まれて、やっと揃ったからこれから帰るところ」
「お使い?それ全部?」
幸村「おー。信玄様が安土の甘味を買って来いとかめんどくせーこと言うもんだから迷惑でしかねー」
佐助「俺も、謙信様に安土の酒を買ってこいって言われた」
「そうなんだ…幸村も佐助くんも大変だね」
(佐助くんに至ってはお酒だから重たいだろうし)
両手いっぱいに酒瓶や風呂敷を抱える二人を見て、何だかんだ言いながらも主君に対しての思いを感じるのだった。
幸村「もう慣れた。さて、そろそろ戻るか佐助」
佐助「ああ。それじゃ、さん。体に気をつけて」
「うん、佐助くんと幸村も気を付けてね」
幸村「おー、またな」
別れの挨拶を告げ、それぞれ進む方向へと足を進める