第10章 触れたくて………
信長との囲碁勝負を終え、天主から部屋へ戻ったはまだ眠気が来そうにないため、反物を広げ縫い物をしていた。
???「まだ起きているのか?」
スッと襖が開くと、光秀が立っていた。
「光秀さん!?どうしたんですか?」
光秀「たまたま廊下を歩いていたらお前の部屋に明かりがついていたのでな。消し忘れたまま寝てると思い見に来てやっただけだ」
ニヤリと意地悪な笑みを浮かべ、を見下ろす。
「ふふふっ、心配してくれてありがとうございます。お茶飲んでいきますか?」
光秀「ああ、そうだな」
は光秀を部屋に招き入れ、お茶の準備をする。
静かに腰を下ろした光秀は、広げられた反物に視線を向け、
光秀「頼まれていた着物か?」
お茶を淹れた湯呑みを光秀にそっと差し出すと、首を横に振り、柔らかく微笑む。
「いいえ、それは自分で着ようと思ってる着物です。針子の仕事が落ち着いたときに、こうやって自分の分を仕立ててるんです」
光秀「そうか…『ぴくにっく』と言うものに行くためにお前も針子の仕事を頑張っていたようだからな」
光秀はぽんっとの頭に手を置き、一撫ですると、驚いたような表情を向けられる。
「光秀さん…どうかしたんですか?」
は光秀の手を払うこともせず、ただ目を瞬かせ光秀を見つめる。
光秀「何がだ?」
「いつも意地悪しか言わない光秀さんに褒められると、どうしたら良いのかわからなくなってしまいます」
光秀「ふっ…そうか。意地悪される方が好きならば、そうしてやろうか?」
光秀は艶めいた笑みと声でそう言うと、頭に置いてあった手を頬へと滑らせる。
「…っ!いえ!どちらも結構です!!」
光秀「くっくっ…全く、意地悪されるのも優しくされるのも拒むとはな」
「光秀さんの場合は極端なんです!」
光秀「そうか」
光秀は愉しそうに笑いながらお茶を啜っていく。
「ピクニックをした場所、光秀さんも探してくれたんでしたよね?前から知ってたんですか?」
光秀「ああ。あの場所は以前、視察に行くのにたまたま通って見つけた場所だったからな。この時期にあれほど色鮮やかになるとは思わなかったがな」