第5章 拡散
佐助「じゃ、俺はこれで失礼するよ。お茶、ご馳走様。近いうち謙信様達の返事を伝えに来る」
「わかった!またね、佐助くん」
佐助は降りてきた天井へとまた静かに姿を消すのだった。
ーーーー数日後、春日山城 広間ーーーー
信玄「安土の姫から逢瀬の誘いとは嬉しいなー。佐助じゃなくて、俺だったらその場で二つ返事なのに、残念だ」
幸村「信玄様はあいつじゃなくても女なら誰でも二つ返事でしょーが」
信玄「姫に言われるのは特別だよ、幸」
幸村「へー、そーですか」
信玄と幸村の会話を静かに聞きながら酒を煽っていた謙信が口を開く。
謙信「して、佐助。その『ぴくにっく』とやらはどのような戦なんだ?」
佐助「言っときますが戦ではありません、謙信様。移り行く季節を肌で感じ、愉しむものです」
幸村「は?何だそれ。それの何が楽しいってんだ?」
腕を組み、首を傾げる幸村に賛同するように謙信も続ける。
謙信「俺にもそれのどこが興をそそるのか、解らんな」
佐助「…そうですか、残念です。じゃあノリノリの信玄様と、誘いをうけた俺だけ参加という事でさんにはそのように伝えておきます。あ、ちなみに安土城の武将達は全員参加のようです」
わざとらしく深い溜め息をつき、立ち上がろうとする佐助を謙信と幸村が同時に制する。
謙信、幸村「待て、佐助」
佐助「はい」
謙信「信長もいるなら最初からそう言え。その『ぴくにっく』とやらに俺も行ってやる。あの男と刃を交えることが出来るなら、この上無く興が昂るからな」
色違いの瞳を細め、上機嫌に伝える。
幸村「信玄様だけじゃ色々面倒なことになるのは目に見えてる。仕方ねーから、信玄様の監視役として俺も行く」
信玄「ん?俺の心配なら無用だぞー?なに、安土から姫を春日山城に連れて帰るだけだ」
幸村「いや、それがもうすでに面倒くせーんです。わかったか、佐助。これっぽっちもあの女の為なんかじゃねーからな」
佐助「わかった。さんもきっと喜ぶ。謙信様、刃を交えることは折角楽しみにしている彼女が悲しむのでやめてください」
信玄「そーだぞ謙信。姫を悲しませては意味がないからな」
謙信「つまらんがまぁ良い」
幸村「お前、人の話聞けよ」
こうして、半月後のピクニックへ春日山城勢も参加が決まったのだった。