第5章 拡散
「楽しみだなぁ~」
はフンフンと鼻唄を歌いながら自室で上機嫌に依頼されていた着物を仕上げていた。
ーーコンコンーー
「ん?佐助くん?どうぞー」
天井の方から叩く音が聞こえ目線を上げると、現代人仲間の佐助の名を呼ぶ。
佐助「こんにちは、さん。近くを通ったから寄ってみた。それにしても今日はやけにご機嫌だね。何かいいことでもあった?」
カタンと天井の板が一枚外れると、現代から一緒にタイムスリップし、信長にとって敵将の上杉謙信の忍びとして仕えている佐助がヒラリと物音立てずに畳の上へと着地する。
「相変わらず身のこなしが一流の忍者だねー。お茶淹れるから座ってて」
佐助「ありがとう。でも、まだまだ修行が足りない」
感心しながらお茶を淹れるに、表情一つ変えずに淡々と返事をする。
佐助「ところで、何かあった?」
「あ、うん!実はね!!」
……………
佐助「へぇ、ピクニックか。懐かしいな。俺も小さい頃に行った記憶がある」
「そうなんだ!信長様がいうには、半月後がベストみたいで、その辺りでピクニックに行くことになったんだ!それが今から楽しみなの!」
は佐助に広間でのやり取りを嬉しそうに話す。
佐助「さんだから、信長様たちも行こうってなるんだろうな。俺なんかが謙信様達にピクニック行きましょうって誘っても『話だけではつまらん』とか言われるのがオチだ」
「そっかぁ…信長様は色んな事に興味を持つ御方だからだよ。でも楽しいのにね、ピクニック…」
は佐助の言葉に思案気に考えた後、ぽんっと手を鳴らす。
「折角だから、謙信様達も呼んでみるっていうのはどうかな!?」
佐助「え…まぁ、今は同盟を組んでるから、戦になることは無いだろうけど、君が大変な思いをするかもしれないよ?」
佐助はの言葉に驚いた様子で目を少しだけ見開く。
「え?どうして?大人数の方が楽しいに決まってる!」
首を傾げながらも、正論を言ったようにうんうんと一人頷いている。
佐助「そういう意味じゃないけど…でも、さんからの誘いだったら来るかもしれない。早速戻って声かけてみる」