第8章 書類配り
『その人は......どうしたんですか?』
自分でこんな質問するのは間違ってる。わかってはいるけど、確認しておきたかった。
春水から笑みが消えた。
京「死んだよ......僕の知らないところでね」
そう言った春水の声はひどく沈んでいた。
京「彼女から別れを告げられた時、殴られようが刺されようが手放さなければ良かったって何度も思ったよ」
『.........』
京「今となってはどうしようもないけどね」
伊勢副隊長も璃久も黙ったままだった。
春水が涙を一筋流したから。
京「千紗ちゃん」
『......はい』
京「ごめんね、まだ仕事が残ってるだろう?行っていいよ」
『失礼...します...』
その後はよく覚えていない。
残りの書類を渡しに行ったことも、どうやって帰ったのかも、何も覚えていない。
唯一覚えているのは、良かれと思ってしたことが、逆に春水を傷つけたということだけだった。