第24章 最終決戦
『事実は変わらないのだから、見当違いなことで嘆くのはやめなさい。悔しいと思ったのなら強くなればいい。守りきれなかったのなら、次こそ守るために力をつければいい。嘆く暇があるのなら、強くなるための方法を探しなさい。可哀想な子を演じても、誰も助けてはくれないわ。自分の手で掴み取らなきゃ意味が無いのよ』
そう言う璃咲さんは今にも泣き出しそう顔をしていた。
『自分の弱さが原因で大切な人を失う悲しみは私も経験したことがあるからよく分かる。辛くて悲しくて苦しくて、弱い自分が許せなかった。でも、失った命はもう返ってこないの!いつまでも後ろをむいてばかりいられない。前を向いて、歩いていかなくちゃいけないのよ!生きている限り!それがどんなに辛いことでも、それが残された者の役目だから』
一筋の涙を流した彼女を見て悟った。
この人も私と同じなのだと。大切な人を亡くしたのだと。
それでも彼女は前に進んだ。全ての苦しみや悲しみを背負って歩いていくことを選んだ。辛くても我慢して、失った人達の思いも背負って今を生きている。
蝶「ご、めん......なさい.......」
気づけば泣いていた。彼女の心に触れて、ようやく自分の甘えを思い知った。
私のせいで宏明が死んだなんて嘘。あの時、私は彼のそばにいなかった。宏明を殺したのはどこからかやって来た虚とかいう化け物で、私は宏明を〝殺した〟のではなく〝守れなかった〟のだ。それを認めるのが嫌だった。
何より大切だったあの子。一生守ると決めたのに守れなかった。それが悔しくて辛くて、許せなかった。力のない自分が許せなくて、死なせてしまった自分が憎くくて、逃げたのだ。
その逃げた私を、璃咲さんは捕まえてくれた。
逃げるな、向き合え。甘えるなと。
『蝶羽、あなたは強い子だわ。だからこそ、守れなかった自分がより一層許せなかったのね。それが大切な人だったのだから尚更。今は辛いかもしれない。でも、それを乗り越えれば、それはいずれあなたの糧となるわ』
嗚咽して泣く私の手をぎゅっと握る璃咲さんの手は冷たかった。
誰かが「心が温かい人は手が冷たい」って言ったのを思い出した。確かにその通りだ。璃咲さんは整いすぎた容姿のせいで一見冷たく見えるけど、本当は情が深くて、とても優しい人。
私を導いてくれる光なのだ。