第24章 最終決戦
今から二百年くらい前。
一から八十ある流魂街の中で、私は下の上くらいに治安の悪い六十二地区の『花枯』で暮らしていた。
その日その日を生きていくのに必死で、悪いことだって幾度となくした。殺人はさすがにしなかったけど、盗みや喧嘩はしょっちゅうだった。暮らしていた場所は、今にも壊れそうなあばら家。周りには不健康で、いかにもガラの悪いヤツらがそこら中にいた。そいつらにくだらない事で喧嘩を売られては、売り返す日々。
喧嘩を繰り返すようになって、私はいつの間にか、かなり強くなっていた。喧嘩で負けることもそうなかったし、相手は私だとわかると逃げていった。愉快だった。無様な奴らの顔を見るだけで腹から笑ったし、ボロボロになって地面と仲良くなる馬鹿どもを見て「ざまあみろ」と醜く笑った。
そんな私にも大切な子がいた。
名前は宏明(ヒロアキ)。私と同じように捨てられた可哀想な子供。だけど、ここには似つかわしくないほど明るく純粋で、太陽のような子だった。
偶然、捨てられて死にかけていたあの子を見つけ、昔の私を見ているようで思わず手を差し伸べてしまった。それからは二人であばら家で暮らした。まるで弟ができたようで嬉しかった。向こうも私に懐いてくれて、幸せだった。貧しくても、この子さえいればどんな逆境にも耐えていけると思った。
でも、その幸せは突然終わった。
その日、いつもの様に盗みをし、宏明の待つ家へと足早に帰った。扉を潜った瞬間、目に飛び込んできたのは真っ赤な〝血〟。
至る所が血だらけで、まるでそこだけ別の世界に行ってしまったかのようだった。
そして、家の中央には血だらけで動かなくなった宏明と、それを見下ろす化け物。
その瞬間、私の視界は紅く染った。
近くにあった鎌を手に取り、化け物に向かって思いっきり振り上げた。鎌は化け物の左足と胸を斬りつけ、化け物は奇声をあげた。
私は止まることなく化け物を斬りつけ続けた。
許せなかった。私の唯一の家族を奪ったことが。まだ小さなあの子を殺したことが。何より、あの子を守れなかった自分のことが。
後悔の念と憤怒が私を駆り立てた。
でも、いくら喧嘩慣れしているとはいえ、相手は化け物。あっちから見れば、私はただのゴミ。