第14章 Master★【キラR18】
「……私は」
来てほしい。
そう叫んでしまいたい。
けど、それは私の気持ちを言ってるに等しい。
だから、言えない。
(言いたくても…私個人の気持ちは言えないです…)
「私は…」
後ろ手でスカートの裾をギュっと握り締め、喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
『メイドはどんなときでも感情を表に出してはいけません』
メイド長の声が頭に響く。
(わかっています。それだけは絶対に)
感情を表に出すわけないじゃないですか。
私はただの『メイド』なのですから。
仕える身でありながら、その方に恋をしてしまった愚かな私。
たとえそれでも、想いを口にはしないと決めたのです。
「キラ様に…御出席頂きたいです……」
「……」
「それが…カガリ様の望みですし、私はそうなるように命じられたのですから…」
心は張り裂けそうなほど苦しいのに、必死で作り笑いをしている私。
それが自分の決めたことでも…正直辛い。
せっかくキラ様がいつもより多くお話されてるのに。
「……わかった」
作り笑いをした私に、無表情なキラ様。
その少し前の顔が、少しだけ悲しそうに見えたのは…私の思い過ごしだったのでしょうか。
多分、私の願望だったのかもしれませんね。
「君がそういうなら…考えとくよ……」
キラ様はまた、私から目を逸らして、私のことを君と呼ぶ。
(いつものことじゃない…)
そう自分に言い聞かせても、心がこんなにも痛い。
「キラ様…」
部屋を出て行ってしまったキラ様に、私の声は届かない。
キラ様が閉めたドアを見つめても、そのドアはもう開かない。
(もし私が…)
自分の言葉を伝えていたら…キラ様はどうするおつもりだったのですか…?
返ってくるはずのない問いを、ひたすら頭の中で問いかけて…。
本島へと戻っていった。