第14章 Master★【キラR18】
「キラ様……?」
海辺に立つキラにはそっと声を掛ける。
夕日に染まったキラの顔は、その呼び掛けすら聞こえないように前を見据えたまま…陽が沈むのを黙って見ていた。
「……」
お互いに黙ったまま波音だけが響き、キラは依然として前を見据えたまま。
紫の瞳には太陽が沈んだ地平線を映し出す。
「好きなんだ……」
「え…?」
陽が沈み辺りが暗くなった頃、突然口を開いたキラ。
独り言のように呟いた声が聞き取れず、はキラの方を向く。
その顔はまだ前を見つめたまま。
「ここから見える景色が好きなんだ。特に夕暮れ時がね……」
「そうなんですか…」
どう言葉を返してよいかわからない。
キラの横顔しか見えないには、彼がどんな表情をしているかもわからないのだ。
(初めて会った時は、いつも私の目を見て話してくださいましたのに…)
キラがの目を見て、笑顔で話していた頃。
その面影すら見せない今では、あの頃が夢の出来事だったようにも思えてならない。
すべては幻。
傷つきたくない心がみせた、幻覚だったのだろうか。
「……」
じっとキラを見つめても、キラはを見ようともしない。
「もう、戻ろうか……」
「え……っ?」
考えごとをしていたが慌ててキラの顔から目を逸らすと、今度はキラがの方を向く。
を見つめる瞳はどことなく淋しそうで、何かを伝えようとしているよう。
でも、すでにキラから目を背けたは、その瞳にすら気付いてもいなかった。
「……寒いから、もう戻ろう…?」
下を向くに小さく微笑んだあと、キラは自分が着ていた上着をの肩にそっとかける。
いくら気候が安定していても、陽が沈めば気温は下がり、潮風がの体温を容赦なく奪っていくから。
「……はい」
キラの温もりが残る上着をギュっと握り締め、はすでに先を歩いていたキラを小走りで追いかけた。
(キラ様のぬくもりは…こんなにも温かいのに)
何故、私にだけそんな態度をとるのだろうか。
答えは出ないまま、時は静かに過ぎていった―……・・